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鉄道模型実験室 No.139  PWM制御とコアレスモータと室内灯の三つ巴

■ はじめに

 TOMIX製のC11-325号機がやっと発売された。 そこで早速性能特性を測定し結果を先回報告した。 その後、レイアウトにてこのC11-325号機を使って旧型客車を牽引させようとした時、さらに室内灯も関係することに気が付きました。 PWM制御方式のパワーパックとコアレスモータ搭載の動力車の関係は、さらに室内灯も関係する三つ巴の状態を考慮しなければならない様相となってしまいました。

 

■ テスト走行の様子

 使用状態を再現するため、性能測定を実施している測定装置を使って走行させた時の様子を紹介する。 供給電源としては、TOMIX製のパワーユニット N 1001-CL を使用し、手作りの室内灯を組み込んだ客車を点灯させた場合です。 客車は電源供給をON/OFFさせるために別に設けた線路上にのせ、本線からの電力と接続させる方法としました。 使用した客車はスハフ42-2053 号車で、組み込んだ室内灯は、「スハ43系客車の室内灯加工 その2」 で紹介したユニットである。

室内灯を点灯させた場合には、機関車が突然速くなる事が確認できます。 次にKATOの正規品の LED室内灯クリア(品番11-212)を組み込んだオハネ25-119号車の場合の状態です。

 こちらの場合は異常ありません。 さすがにメーカー品ですね。 このことより、異常が発生する場合は、手作り品が原因し、その回路構成がミスマッチと考えられます。 特にチラつき防止のために組み込んだコンデンサが悪さをしていると思われます。  PWM制御はパルス制御ですから、チラツク原因の一つですが、コンデンサによってパルスが平滑化されて、パルス制御の効果が亡くなってしまっていると思われます。 当然と言えば当然でね。 そこで オシロを使ってもう少し解析していきたいと思います。

 

■ オシロでの観察

 室内灯の照明ユニットでの観察を実施するための実験セットを下に示す。 パワーユニットからの電力をブレッドボードに設けた電流検出回路を介して照明ユニットに接続させる。 電流検出回路は 0.22Ωの抵抗をシャント抵抗とし、供給電圧と電流をオシロに取り込んでいる。

 パワーユニットのダイヤル位置をセットして、その時の電圧をCH1(黄色)に、電流をCH2(青色)にて観察する。 その時のオシロ画面を記録したものを次に示す。

 

● KATO正規品の室内灯

 まず、KATO製のLED式室内灯から調査した。 このLED式室内灯は、新旧のタイプを所有していたので、それぞれテストした。

 新旧の違いを右に示す。 旧タイプは 560Ωの抵抗とブリッジダイオードを使って回路を構成していた。 新タイプは、抵抗の代わりに 18mA の定電流ダイオードを使用しており、両者ともコンデンサーは使用していなかった。

 ブリッジダイオードは6本脚の特注品のようであり、ネットで探しても該当する品が見つからなかったので、テスターで導通テストの結果、ブリッジダイードと判断した。 そして、新旧とも同じ物と見受けられた。

● KATO製 LED室内灯クリア 品番:11-212

 このユニットは上記のビデオに搭載していた室内灯である。 ダイヤル位置をゼロ近くから最大近くまで回転させた時のオシロ波形を下に示す。

 電圧と電流は比例関係にある事がわかります。 また、電流値の頭は一定であることも観察されます。

● KATO製 白色室内灯セット 品番:11-210

 次に旧品である品番が11-210 の場合を示す。

 新旧の違いは無いものと判断する。

 

● TOMIX製 室内照明ユニットCセット(白色) 品番:0735

 次に、TOMIX製室内灯をテストする。 このユニットは回路部分が照明用の導光板の中に埋め込まれている。 LEDは 3mm の砲弾型である。  ダイオードはハーフブリッジのICを2個使用してブリッジを構成していた。 電流制限は 560オームを使用し、コンデンサチップをしようしていた。 回路図を右に示す。

 オシロ波形を下にしめす。 最後の2枚は、ユニットをを外して、パワーユニットからのパルス信号を観察したものである。

 波形には異状は認められなかった。 また、室内灯の接続を外した場合との比較からも、照明ユニットが影響を与えていないと判断される。

● 麦球式の室内灯の場合

 LEDが採用される以前の麦球式ユニット (KATO製室内灯セット、品番:11-201) の場合も観察しておこう。

 パルス波形は電圧と電流とも異常なしである。

 

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■ 自作製の室内灯ユニットについて

 これまで調べた市販品において、コアレスモータに影響するようなパルスを不自然に変形させる現象は見つからなかったので、LEDを使った自作製のユニットを観察することにした。

● 153系用の室内灯

 例の「夕庵式」を参考にして作った153系用の室内灯を観察した。 報告書「153系に室内灯を組込む」(2012/6/15作成)にて作成したユニットである。 その時の波形を下に示す。 なお、上の段はユニットを接続した状態で、下の段はユニットを外した時の状態である。

     

     

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 これまでの波形とは異なった現象を示した。 電圧のパルス幅が、ユニットを接続した場合としていない場合とでは大きく変化しているのである。 さらに、電流が流れている時間も電圧のパルス幅とは一致していないのである。 そして、その幅はユニットを接続していないときの電圧パルス幅になっているのである。

 これは、PWM制御された電源から電圧を掛けらている時は電流が流れるが(当然である)、パルスが切れると電圧は把持されるものの、電流はほとんど流れていらに事を示す。 さらによく見るとマイナスを示しているようでもあるのだ?

 使用したユニットの部品の詳細は上記の報告書に記されているが、10μFのセラミックコンデンサーの影響ではないかと推察する。

● 24系25形客車用の室内灯

 報告書「チップLEDを使って室内灯を作る」(2014/3/6作成)にて作成したユニットを調査する。 このユニットは電球色に近いチップ式のLEDを使用したもので、右の写真にそのユニットを示す。 LED電流制限はチップ式のCRDをしようしている。

     

     

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 今回も、上の段はユニットを接続した状態で、下の段はユニットを外した時の状態を示すが、傾向は同じである。

 

● 31系旧形客車用の室内灯

 報告書の「オハ31系旧形客車にチップLEDの室内灯を組付ける」(2015/6/9作成)にて制作したユニットを調査する。

使用した部品の仕様は上記と同じである。

     

     

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 やはり傾向は同じである。 電流のパルス幅が伸びていることがコアレスモータに対して悪さをしているのであろうか。

● 43系客車用の室内灯

 報告書「スハ43系客車の室内灯加工 その2」(2016/5/11作成)にて制作したユニットを調査する。 このユニットは上記のビデオに搭載していた室内灯である。 構成している部品の仕様は、ブリッジダイオードを小型の物に変更していることと、10μFのコンデンサの取り付け位置を変えたことである。 狭い場所に取り付けたために、ブリッジダイオードの上流側に取り付けている。

 この結果が思わぬ悪さをしていることに気が付いたのである。 コンデンサはチラツキ防止のために挿入している野であるが、ブリッジダイオードの上流側でも下流側でも関係ないと安易に気持ちで工作したのである。

 オシロの波形を紹介しよう。

     

 電流波形は一直線で、パルス波形になっていないのである。 左はダイヤルがゼロ付近で、右は少し回した位置である。 さらに回した状態を下に示すが、電流の平均値が少しずつ増加しているものの、電圧波形は一直線のままである。

     

 そこで、ユニットの接続を外した場合と接続した場合の状態を下に示す。

     

  ムムムのム・・・・・・・・・・! ムムムのム・・・・・・・・・・! 何故だか楽しくなりますね。

 電圧で見る限り、これではパルス制御が用をなさない状態ですな。 電流波形も、なんでこんなにガタガタするのでしょうか? コンデンサの取付け位置を変えただけで、これだけの変化があるのだろうか? この結果がコアレスモータに影響していることは容易に想像できます。 確認するまでも無いでしょう。

 今まで、多くの客車に手作りの室内灯をつけてきましたが、最後のに示したミステイクの室内灯は5個だけのはずです。 その中の一台を偶然にもコアレスモータ搭載車と組み合わせて試運転をしたものですね。 もし、その時に他の車両を使用していたら、今回の件は気が付かなかったはずです。 ラッキーなのだろうか。

 この後、ブレッドボードに回路を組付けて、コンデンサの位置の違いや、容量の違いなどによる波形の違いを観察してみました。 その結果は次回の報告とします。

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 2017/4/12 作成