キハ35系 首都圏色(M)  キハ35-68 号車

実車プロフィール

 昭和30年代に入り、大都市近郊の電化されていない区間に対して、気動車による列車増発が実施された。 そこで登場したのがこのキハ35系である。 101系電車をベースに独特の特徴として、外吊り式の側扉を採用している。 また、気動車としては初めてオールロングシート、両開き扉を採用している。 本形式は、片運転台で便所付車であり、単行運転や2両、4両編成など、必要に応じて柔軟に編成された。

 

模型プロフィール

メーカー : KATO
車両品名 : キハ35 首都圏色(M)
車両品番 : 8074-2

車両番号 : キハ35-68
発売日 : 2009年発売
入手日 : 2011年5月23日 新品購入
定価 :  \ 5,355.-

   

諸元と分解調査

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● このモデルは、 2009年に発売されたモデルである。

● カプラーはボディマウント式のナックルカプラーを標準装着してる。

消灯スイッチ付のヘッドライト/テールライトを1エンド側のみに標準装備している。 従って2両編成で走らせるのが基本のようである。

トラクションタイヤは装着されていない。

● 主要諸元

連結面間距離
136.5mm
車体全重量
64.0 グラム
台車中心間距離
91.0mm
動輪直径
φ D = 5.5
台車軸距離
14.0mm
ギャ比
i = 12

 

● このキハ35-68 号車は2両編成を想定した中の動力車である。

● 車体を分解した状態を下に示す。 座席シートなどは表現されていないが、運転席はシースルーで見ることが出来る。

● この動力ユニットを下に示す。 このモデルには、車体や動力ユニットのAssy品番が設定されていない。 いつの頃からか不明であるが、これらの単品部品の補給は中止すると言う意図と思われる。 不良になったら車両毎買い換えるか、ホビーセンターなどに修理に出せと言う事らしい。

● 動力台車について、下に示す。 ウォームギヤや歯車などの構成や諸元は、313系とおなじであったが、台車の上部に回転止めの突起が設けられていた。  トラクションタイヤは装着されていない。 これは小編成で走らせることを想定しているようである。

● モータには、フライホイールが装着されており、モータの装着方法も313系などからは変更されていた。 また、ヘッドライトとテールライトを1エンド側のみに装着されているが、ライトユニットからの光を二つの導光材で、異なる場所に設置されているヘッドライトとテールライトにそれぞれ導光されている。 なかなか工夫された跡が監査圧されるが、分解じには、しっかりとメモしながら実施しないと、再組付け時に組付け方法が分からなくなってしまうので、要注意である。 消灯スイッチも小さな部品なので無くさないように。 忘れると点灯しなくなるだけですが・・・・・・・・。

● 全部品の一覧を下に示す。

● シャシーを下に示す。 刻印されている品番は 6072 なので、キハ30 モデルで新設されたものと推定する。

● モータには、30度のスキューが設定されており、両側にφ9.0×6.5mm のフライホイールが装着されていた。

● このモデルに手を出した最大の理由は、ボディマウント式のナックルカプラーを標準装着してからである。 丁度この頃、KATOの色々なナックルカプラーが発売されていた時期であり、「KATOのナックルカプラーの一覧表」としてまとめていたので、ボディマウント式と言う新しいタイプを調べるためであった。

 使用しているカプラー単体は、Z01-0239 で ナックルカプラー長(黒)239系そのものであった。 カプラースプリングは板ばね式を使用するのも同じであり、スノープロウ付きスカートを使用する場合の構成を電車などの床にセットするようにしたものである。 このタイプが客車や電車などに波及するのかと想像していたが、連結面を短くできないなどの理由で他のモデルには採用されなかったようである。

● ライトユニットの裏表を下に示す。 ヘッドライトとテールライトを1エンド側のみで光らせるために、ライトユニットの表と裏にLチップLEDがハンダ付けされていた。 このため、裏表に回路が形成されており、スルーホールで接続されていた。 また、中央部の山形形状の溝は、スイッチのための回路である。 しかし腑に落ちない回路パターンである。

 そこで、この部品の品番は6074-1G であるが、基板には3057の文字が見えるので、これを手掛かりに対象モデルを探してみた。 すると、この品番が3057は EF63 1次形 に該当し、仕様を見ると ”ヘッドライト/テールライト点灯(消灯スイッチ付)” と記述されているのを見つけた。 信越本線 横川-軽井沢間の通称「碓氷峠」にて、後補機として使用された場合に必要なテールライトも点灯するようにしてあるのだ。 さらに説明を読んでいくと、双頭式連結器の採用や、電気機関車では稀なテールライト点灯機能が有る特殊な回路構成のライトユニットなどと説明されえていた。

 すなわち、ここで採用されているライトユニットの基板は、EF63で新設された部品を流用しているのである。 EF63では前後にヘッドライトとテールライトを点灯/消灯させる必要があったので、対称形の回路構成となっているのである。 その基板を流用しているので、回路パターンの理由がやっと判明した。 しかし、他のモデル様に別体式のライトユニットにすれば、もっと簡単なパターンで良かったのにと疑問になる。 部品点数の削減などの改良なのか、試しに採用した構成なのか?

● 次に集電シューを見てみよう。 抑えの部材の形状が新しくなっている。 説明書ではサスペンション構造となっているが、「KATOの動力機構の変遷 電気機関車編 その3」で述べたアイディアを実践しているものと見受けられる。

 先の紹介したライトユニットの二つの導光材についても拡大した写真を右上に示す。 真ん中の部材がヘッドライト系とテールライト系を遮断する部材である。 似たような部材であるために、再組付時にはどちらが上でどちらが下になるか、注意して下さいね。

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● 自分が所有しているKATOの電車系のモデルでは、このモデルが一番新しいモデルである。 従って、これ以後に開発された新しいモデルでの構成はどうなったのだろうか興味がわいてきた。 例えば品番が4861-1のクモ二83 800番台 横須賀色(M) について、Assy表を見るとボディや動力ユニットもAssyパーツとして設定してあるのだ。 復活したのだろうか。 動力ユニットにはライトユニット付きとなっている。 しかし、発売されたモデルを年代順に揃えるのは大変なので手を出さないことにしよう。

動力特性

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 有線式の動力特性測定装置を使用して動力特性を測定する。 この測定装置では、走行中のモータ端子電圧とモータ回転数の測定を可能にしている。

● モータ回転数検知のために、フライホイールに白黒のマーキングを実施した。 しかし、モータは床下のカバーで覆われてしまうのでこのマーキングを覗くところが無い。 そこで仕方なく床面を加工して、四角いのぞき穴を開けた。 下の写真。

● 端子電圧の測定端子の取り付けなどは、モハ313-8 号車と同じである。 さらにボディなどを装着した時の重さに合わせるために、水草の重りで補重している。
 測定時の状態を下に示す。

● 測定実施日: 2016/6/18 連結した重り車両: 65.3グラム、摩擦抵抗 0.70 グラム    尚、ヘッドライト類はOFFした状態である。

 

1)速度特性:

 動力車の速度特性として、速度・電圧特性と電流・電圧特性を下に示す。

 今回は、「モータの無負荷回転特性を測定する」で報告したモータの無負荷回転特性の測定データを比較のために、グラフ上にプロットした。 最初は、モータの回転数の測定値が2倍も異なっていたので、びっくりした。 どこかに測定ミスがあったと判断し、追加検討を実施している。 その結果、ジャンパーピンの設定ミスと判断し、修正してここに掲載している。

 車両での走行時とモータ単品時ではほとんど変化無いといえるが、消費電流が僅かにアップしているといえるだろうか。 これは、駆動系の摩擦抵抗のためと推察する。

 また、車両速度のバラツキとモータ回転数のバラツキを比較した場合、車両速度のバラツキが大きくなっているのは、電圧降下量がバラツイているためと想定される。 スリップ率が少しマイナス気味なのはトラクションタイヤを履いていないためと思われる。

2)牽引力特性

 スケール速度が100Km/h 前後になるような電圧値を設定して牽引力を測定しているが、今回は少し設定幅を広げてみた。

 車両速度のバラツキやや大きいのは電圧降下量の影響とも思われるが、よくわからない。 また、クモハ 313-3020 号車と比較すると、スリップ領域での牽引力は 15グラム弱と同等であるが、特性の傾きが異なっているようだ。 ギヤ比や動輪径が同じであるのでモータ特性の違いと推定できる。 このキハ35の方が負荷がかかっても速度の落ち込みが少ないと判断される。 摩擦係数のパターンについて、微妙の形状が違っているが何故なのだろうか?

 

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● 出力と効率

 上記の牽引力測定データを基にして、右に示す様に、出力と効率のグラフを追加する。 2016/11/28 追記

 

3)考察

 この動力ユニットは、ローカル用として落ち着いたスケールスピードで走行させるような仕様となっている。 そして牽引力は 15グラム弱と推定できる。 そして摩擦係数は 0.2程度と思われるが、妥当な値と思われる。

 キハ35系のトレーラ車であるキハ35-162号車との2両編成の場合、総重量が86.6グラムとなり、トレラー車の抵抗が0.5グラムなので、キハ35-68号車の動力によって、162パーミルの勾配を登坂できることになる。 また、1M3Tの4両編成の場合は、総重量が 131.7 グラム、トレラー車の抵抗が1.5グラムとなるため、95パーミルの勾配を登坂できることになるが、これまた充分なパワーであろう。