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小型蒸気機関車: C12-46 号機

 

実車プロフィール

 このC12型は、軸重制限のある簡易線規格路線用の小型軽量な機関車として設計され、本形式からテンダー式のC56形が派生した。 1932年(昭和7年)から1947年(昭和22年)に282両が製造されている。

 活躍の場は、全国各地の比較的短距離の閑散線区、あるいは入換用として長く使用された。

 現在、日本国内では真岡鐵道にC12-66が動態で保存されている。 また、全国各地に静態保存機がある。

模型プロフィール

メーカー : KATO
品名 : C12
品番 : 2022-1
車両番号: C12-46
発売日 : 2015年6月30日
入手日 :2015年7月23日 
定価 : \10,800.-

諸元と分解調査

  

連結面間距離
78.5 mm
動輪直径 D = φ9.2 mm ギャ比 i = 30.32
車体全重量 42.1 gf 動輪車軸荷重 27.6 gf    
先輪車軸荷重 6.5 gf 従輪車軸荷重 8.0 gf    

● このモデルは、先に発売されたC56型に続く小型のSLで、フライホイール付コアレスモーター搭載しており、消費電流がきわめて少ない上に、滑らかな低速走行を実現している。

● 小型タンク車の欠点である集電性能について、 先輪と従輪でも集電させることにより改善されており、小半径の走行性と共に、小レイアウトや小スペースでの運転でもスムースな走行性を確保した画期的な小型蒸気機関車である。

● ナックルカプラー装着。 前後のライトは進行方向が点灯する。

● 細かいディテールも、自分の下手な金属製組立キット以上に仕上がっています。 そして、値段も半額以下ですからね。 ライトも点灯するし。

● 側面とボディーを外した状態をを下に示す。 モータは細いコアレスモータを採用しているため、ボイラーの中にすっぽりと収まっています。 また、ボイラーの下や先輪および従輪のスポークが抜けているので、凄いですね。

● シャシーの側面も凄い! 最近のKATOのSLは、この見え難い部分まで手が入っています。 さらに、集電性向上のためか、あるいはイコライザー機能のためなのかづ名であるが、第1と第2動輪軸には、板ばねがセットされています。 モータとの結線も工夫されています。

● 左右のシャシーを分解すると、駆動機構の歯車などが分解出来ますが、二つのシャシーはガッチリと組み合わされており、無理をして分解するのは止めました。 この部分の分解状態は、他の人が実施されていますので、そちらを参照することにします。 また、ギヤの歯数やモジュールの情報も同様に参考にさせて頂きました。

● 車両を分解した状態を下に示す。 なお、これらの分解は、下記の動力特性を測定後に実施しました。 よくよく観察するとネジが一本も見当たらないのには驚きですね。

● 動輪の駆動方法は、第3動輪をギヤ駆動し、第1と第2はリンク駆動です。 このため、動輪セットをシャシーに再組付けする時は、動輪の位相を気にせずに組み付けられますので楽ですね。 また、サイドロッドが分割式ですから、下の写真のように、各動輪が軸方向に自由に移動出来ます。 これは小半径のカーブを曲がるときに有利ですね。 シャシーに組み込んでも動輪は上下左右にかなり動く事が出来ます。

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● 前照灯は2個のLEDを使用しています。 表と裏を撮影して合成したものを右の写真に示す。 回路は560Ωのチップ抵抗とコンデンサを使用した簡単な回路ですね。 上側のLED が前方用の照明で、下側のLED が後方様の照明で、一つの基盤にセットされています。

 この基盤の二つの足は、シャシーからの通電部なのですが、シャシーとキャブを固定する部材も兼ねており、上手いこと工夫されています。

● 前方への導光部材は、ボイラの天井を通って前方のランプまで光を導いています。 後方へは、同様に導光部材を使っています。 下左の写真は、ボイラとキャブを離した状態ですが、右の写真は二つを組み合わせた状態です。

 キャブ内の造形も、これによって本物らしく仕上がっており、キャブ天井に収めたLED基盤といい、その工夫の技に感心しきりです。

 自分のLED工作とは雲泥の差があり、すべてのモデルに採用してもらいたいですね。

 

関連報告

 ◆ KATO製 C12-46号機の動力特性の解析 ( 2018/8/7 )
「新解析法の修正」(2018/8/5)にて報告した方法で解析した結果を報告する。
 ◆ KATO製 C12-46号機の動力特性 ( 2018/7/12 )
有線式の測定方法で動力特性を測定する。
 ◆ 伝達機構ギヤ部への注油の影響 ( 2018/7/11 )
このC12-46号機を使って、オイル塗布の有り無しによる性能特性への影響具合を調査した。

動力特性

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 改良した動力特性測定装置を使用して動力特性を測定する。 この改良された測定装置では、従来の項目に加えて、走行中のモータ端子電圧とモータ回転数の測定を可能にしている。 

● 測定日: 2015年12月8日、   C12-46号機の測定時の重量: 42.8グラム、  測定車の重量と抵抗: 78.9 グラム、走行抵抗は、0.90グラム、  
 センサーを取り付けた時のC12-46号機の状態を下に示す。 ボディーを取り外しているため、その代わりに重りを張り付け、車両の重量を合わせている。 ただし、測定車と連結した時は、信号線のコネクタの重さは測定車側にかかるため、C12-46号機の車輪に掛る重量は、単独車両と同じ重さの42.1グラムになるように調整してある。 モータの回転センサの取り付け状態を下右の写真に示す。 センサーをコンパクトにしたので取り付けやすくなったが、しかし、機能優先とはいえ、ウレタンで作った支持部材が大袈裟になってしまった。

 測定車と連結した状態を下に示す。 なお、測定は足まわりの分解前に実施した。

1)速度特性:

   動力車の速度特性として、速度・電圧特性と電流・電圧特性を下に示す。 牽引力測定において疑問点が有ったので、牽引力測定後に、もう一度この速度特性の測定を実施した。 そして、測定車を使わない状態でも同様に実施した。

 牽引力測定後は、速度と電圧の関係には変化が無いものの、電流値がかなり小さくなっている。 測定車の影響を心配して測定車を使用しない方法でも測定してみたが、測定車の転がり抵抗による負荷によって多少電流値が影響されているようであるが、大きな影響はないと判断した。 また、電圧降下量が増加したのは、汚れが増えたからか?

 なお、tp/tt のグラフは、モータの回転数を計測している時間 tp と、車速を計測しているゲート通過時間 tt との比で、ギヤ比が大きいために今までのモデルよりも値が小さく出ているが、測定時間としての不具合はないし、値も一定値で安定しているためモータの回転数のデータは信頼できると判断出来る。

2)牽引力特性

 最初に5ボルトの状態で測定を実施していたが、途中から様子がおかしくなって来た。 測定台の勾配が大きくなってスリップ状態が始まった時点で、突然ブレーキが利かなくなった様子であり、下り坂を暴走して下のカーブで脱線してしまった。 そして再セットして測定を続行したのであるが、特性が変わってしまったのである。 下の一番左のグラフ参照。 駆動側や制動側のスリップ限界が15グラム程度あったのが、10グラム近くに低下してしまったのである。

 その後、6.5ボルトと8ボルトにて測定したが、限界は10グラム程度であった。 この時の電流値を右上のグラフで示すが、電流値も何故か 20mA 近くも低下している。 真ん中のグラフは、モータの回転数よりスリップ率ゼロの場合の速度を小さな丸で併記させたものであるが、スリップの状態が変化しているのがわかる。

 即ち、脱線した時の少し前より、何らかの状態変化が発生し、スリップ限界が低下してしまった。 このために、下り坂でのブレーキが甘くなって暴走したものと推察するが原因は良く分からない。 その後、同僚機である C12-42 号機を測定したが、スリップ限界はおよそ10グラム程度であったので、もともとはこちらの値が正常であり、当初の状態が異常であったと推察している。

 次に、電圧降下の状態を観察する。 牽引力、電流、車速などの値を横軸に取って傾向を見たが、0.3〜0.7ボルトの範囲でバラバラしているのみで、傾向が特定できなかった。 電圧降下は一定値であるとしか読み取れなかった。

 スリップ状態を見てみよう。 測定当初は、やはりスリップ率は小さく、摩擦係数としても 0.4 近くの値を示していたが、途中からスリップが大きくなってしまった。

3)考察

 C12-42 号機の測定結果と合わせて考えてみると、実験初期は何らかの異常な状態であって、途中から正常な状態に変化したといているが、確証はない。 異常な状態とは? 電流値が高い事はモータの負荷が高かったことであり、駆動機構のどこかに無理が有ったのだろうか。 その上にスリップ限界が高くなる原因とは?

 勝手な推察をひとつ。

 第1動輪のサスペンション機構がこじれて動輪が少し下にさがっていた。 このために、第2動輪が浮いてしまい、機関車の重量を第1と第3動輪で受けていたので、結果としてトラクションゴムを履いていた第3動輪の駆動力が増し、スリップ限界が高かった。 第1動輪のこじれによりリンク機構の負荷も少し増えていた。 その後、このこじれが解消して、第3動輪の軸重が減少してスリップ限界も低下した。 さて、その証明方法は・・・・・・・・・・・?

 まあ、正常な状態に戻ったと考えることにして、一件落着としておこう。