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鉄道模型工学  第3.5次特性解析 速度項を考慮したした解析の修正

 先に報告した「第3次特性解析 速度項を考慮したした解析」 の後、幾つかの測定データを整理すぬ中で明らかとなった内容を修正することにした。 その内容は、抗力項の考え方を整理することと、動輪軸側の摩擦トルクの式を1次式に近似する式に変更することである。

  1. 減速ギヤ部の抗力項を考慮しなくてもモデルは実測値と良くマッチしているので、抗力項は要らない? ………ではなくて、摩擦係数の計算の中に既に含まれていると見るべきであろう。
  2. 動輪軸側の摩擦トルクの式は2次式を適応する場合の方がまれであり、1次式近似でマッチする場合の方が多い。

 この2点に関して修正する。

 

■ 抗力項の考え方

 抗力項は、動力機構内の可動部分にて発生する摩擦抵抗において、力に比例する摩擦抵抗分を表すことにしている。 そして、可動部の速度、あるいは回転数に比例する摩擦は速度項として表現している。 さらに、この抗力項と速度項は、どうやら独立した要素と見なされると判断できるのである。 このため、互いに独立して計算を進める事が出来るのだ。

 

 この抗力項は、上記の報告でも述べたように、ウォームギヤの摩擦抵抗を推定した時に、既にその影響が含まれていると考えているのだ。 その裏付けとする考え方を、ここで整理しておくことにする。

 

 

 ウォーム歯車の歯面での力を直接測定出来れば文句は無いのであるが、それは不可能なのでウォーム軸が外から受ける力を測定して推定するしかない。 歯面には歯面と直角に作用する抗力と水平に働く摩擦力が働いて、ウォームのトルクとホイールのトルクとして関係させることが出来る。 しかし、ウォームやホイールの外部からみると、これ以外に軸受部に掛かる摩擦力も関係し、これらが加味した力として測定されている。

 この摩擦力は、ウォーム軸トルクには加算されて測定されているし、ホイールトルクから伝達された動輪トルクではマイナスされて伝達されているのである。 このため、摩擦力で加算・減算された値を使って摩擦角を計算すると、摩擦力が含まれていることになる。 この摩擦力は伝達する力の大きさに比例するもtの考えられるので、抗力項そのもにと考える事ができる。

 今まで歯面の抗力と摩擦力の関係を摩擦係数μとして説明してきた。 さらにその角度を摩擦角αとしたが、さらに抗力項を含めた関係を見かけの摩擦角αと定義する考え方を取り入れることにした。 抗力項も摩擦係数もどちらも分母は抗力としており、合算して計算しても問題ないのである。

 この関係を前に示したイラストを修正図を右上に示す。 制動時も同様に示されるが、図を単純化して、力のベクトル図だけにしたものを下に示す。

 その後の解析作業を進める中で、動輪のスリップ率を解析する時に、動輪の牽引力の方向がプラス側とマイナス側、即ち、駆動側と制動側に区別して計算する必要があるのだが、上記の駆動時と制動時の区別と混乱してしまった。 スリップ率の解析では動輪での駆動状態を区別し、見かけの摩擦角の解析ではウォームギヤの歯面の当たり具合で区別するのであり、その条件は違ってくるのである。

 そこで、ウォームギヤの歯面の当たり具合で区別する呼び方として、駆動時の場合を表歯面時と呼び、制動時の場合を裏歯面時と呼ぶことに変更した。

 さらに、見かけの摩擦角αのtan 値であるμの記号を  tanα = μo  とする。

 

■ 動輪軸側の摩擦トルクの式

 動輪軸側の摩擦トルクの近似式を求めるために使用したグラフについて、他のモデルでも測定したので比較してみよう。

 最初に検討したC59-123号機のデータは確かに曲線的であるが、他のモデルでは直線的であること多い。 構造的な違いが影響するのであろうか、異常と思えるパターンもある。 このため、2次曲線で近似するよりも、直線近似にしておいた方が式の取扱いが容易である。 そう厳密にマッチングさせる程でもないと判断して、式のモデルも変更することにする。

 

■ モデルの修正

  第2点は、最初に実施したC59-123号機での検証に於いて、動輪軸側の摩擦トルクは速度の二乗に比例するモデルとしたが、その後の他のデータではその傾向が少なく、むしろ速度と単純に比例する傾向が強かった。 このため、動輪軸側の摩擦トルクの式を元の1次式に近似するモデルに変更することにした。

 

 まず、摩擦損失の速度項についても修正する。 ウォーム軸側の摩擦トルクについては、速度係数 λw、 固定項 Rw モータ回転数 Nm (rpm)とすると、

     ウォーム軸の摩擦トルク = λw・Nm + Rw   ( gf-mm )

とする。 また、動輪軸側の摩擦トルクについては、速度係数 λd、 固定項 Rd 動輪回転数 Nd(rpm)とすると、

     動輪側の摩擦トルク = λd・Nd + Rd ( gf-mm )

とする。

 この関係をブロック図に入れ込んだ修正版 Ver 3-1 を下に示す。  ⇒ 拡大図

 なお、スリップ率の記号はねじれ角βと重複していたので、ζの記号に変更している。

 

■ まとめ

 今回修正した計算モデルとEXCELの解析シートを使用して、KATOのコアレスモータのシリーズの解析を実施した。 その個別結果とそのまとめを実施中であるので、逐次報告して行こう。 個別調査の結果については、「動力車の調査」にてリストを掲載しておきます。

************  新解析法の修正 (2018/8/6) を再編集 ********