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鉄道模型工学  新解析法の修正

 

■ いきさつ

 先に報告した「速度項を見直した新解析法の検証」(2018/5/23) の後、幾つかの測定データを整理すぬ中で明らかとなった内容を修正することにした。

 その内容は、抗力項の考え方を整理することと、動輪軸側の摩擦トルクの式を1次式に近似する式に変更することである。

 

■ 抗力項の考え方

 

 抗力項は、動力機構内の可動部分にて発生する摩擦抵抗において、力に比例する摩擦抵抗分を表すことにしている。 そして、可動部の速度、あるいは回転数に比例する摩擦は速度項として表現している。 さらに、この抗力項と速度項は、どうやら独立した要素と見なされると判断できるのである。 このため、互いに独立して計算を進める事が出来るのだ。

 この抗力項は、上記の報告でも述べたように、ウォームギヤの摩擦抵抗を推定した時に、既にその影響が含まれていると考えているのだ。 その裏付けとする考え方を、ここで整理しておくことにする。

 ウォーム歯車の歯面での力を直接測定出来れば文句は無いのであるが、それは不可能なのでウォーム軸が外から受ける力を測定して計算する必要がある。 入力としてウォーム軸に掛かるトルクは、モータの出力トルクを電流値から推測して計算することが出来る。 また、出力として得られるホイールのトルクは、動輪のトルクをもとに計算できる。

 先回の報告では、歯面の抗力と摩擦力の関係を摩擦係数μとして説明した。 さらにその角度を摩擦角αとしたが、さらに抗力項を含めた関係を見かけの摩擦角αと定義する考え方を取り入れることにした。 抗力項も摩擦係数もどちらも分母は抗力としており、合算して計算しても問題ないのである。 この関係を「新解析法の検討」(2018/5/16) にて示したイラストを修正して、右上のイラスト図に示す。 ホィールギヤはウォームのねじれ角と同等なハスバ歯車になっているのが当然と思っていたが、部品を観察すると平歯車のままであった。 このため、イラストも修正している。 歯面はもとから片当たり状態なのである。

 制動時も同様に示されるが、図を単純化して、力のベクトル図だけにしたものを下に示す。

 その後の解析作業を進める中で、動輪のスリップ率を解析する時に、動輪の牽引力の方向がプラス側とマイナス側、即ち、駆動側と制動側に区別して計算する必要があるのだが、上記の駆動時と制動時の区別と混乱してしまった。 スリップ率の解析では動輪での駆動状態を区別し、見かけの摩擦角の解析ではウォームギヤの歯面の当たり具合で区別するのであり、その条件は違ってくるのである。

 そこで、ウォームギヤの歯面の当たり具合で区別する呼び方として、駆動時の場合を表歯面時と呼び、制動時の場合を裏歯面時と呼ぶことに変更した。

 さらに、見かけの摩擦角αのtan 値であるμの記号を  tanα = μo  とする。

 

■ モデルの修正

  第2点は、最初に実施したC59-123号機での検証に於いて、動輪軸側の摩擦トルクは速度の二乗に比例するモデルとしたが、その後の他のデータではその傾向が少なく、むしろ速度と単純に比例する傾向が強かった。 このため、動輪軸側の摩擦トルクの式を元の1次式に近似するモデルに変更することにした。

 

まず、摩擦損失の速度項について、修正する。 ウォーム軸側の摩擦トルクについては、速度係数 λw、 固定項 Rw モータ回転数 Nm (rpm)とすると、

     ウォーム軸の摩擦トルク = λw・Nm + Rw   ( gf-mm )

とする。 また、動輪軸側の摩擦トルクについては、速度係数 λd、 固定項 Rd 動輪回転数 Nd(rpm)とすると、

     動輪側の摩擦トルク = λd・Nd + Rd ( gf-mm )

とする。

 この関係をブロック図に入れ込んだ修正版 Ver 3-1 を下に示す。  ⇒ 拡大図

 なお、スリップ率の記号はねじれ角βと重複していたので、ζの記号に変更している。

 

■ まとめ

 今回修正した計算モデルとEXCELの解析シートを使用して、KATOのコアレスモータのシリーズの解析を実施した。 その個別結果とそのまとめを実施中であるので、逐次報告して行こう。 個別調査の結果については、「動力車の調査」にてリストを掲載しておきます。