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鉄道模型実験室   C56-160号機の動輪を交換する

■ はじめに

 マイクロ製のC56モデルはトラクションタイヤを第1動輪に履いている。 同じ様な動力機構と動輪配置を持つ他のモデルは、自分の知るか限り、第3動輪にトラクションタイヤを装着している。 C56モデルだけが何故第1動輪に?・・・・・・・・・とその理由を推察しようとしても何の手掛りも無い。 そこで今回は、あえて第3動輪にトラクションタイヤを装着させ、動力性能から見た特徴を探し出し、その理由の一端を探してみることにした。 本当はマイクロの関係者に問い合わせれば済むことであるが・・・・・・。

 

■ 動輪の交換方法の検討

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 MICRO ACE 製のC56形の動力機構をイラスト風に示すと右の様になる。 第1動輪は、アイドラギャを介してギヤ駆動されており、第3動輪は第1動輪からサイドロッドにより駆動されている。 第2動輪はこれとは別にギヤ駆動されており、サイドロッドとは、ガタの多いピン穴でサイドロッドと連結されている。

 他のモデルの動力機構については、「マイクロエース製蒸気機関車の動力機構一覧」 を参照下さい。  このC56形と類似のモデルは、8600形、C58形、C50形、C12形などがあり、これらはほぼ同年代に製品化されている。 そしてトラクションタイヤが第1動輪に装着されているのはC56形のみであり、特異なモデルとなっている。

 ここで、他のモデルの様に第3動輪に装着すべく動輪を交換するためには、次の様な方法が考えられる。

   1) 第1と第3動輪の軸と車輪を分解し、再組付けをする。

   2) 第1と第3動輪を分解せず、単に入れ替えるだけにする。

 第1の方法は、動輪を再組付けする場合に、ロッドピンの位相を左右の車輪で90度進める位置に嵌め込むと共に、第2動輪とのギヤ駆動による位相位置をピッタリと合わせなければならない。 これは至難の業を要する作業となり、99%は失敗する改造工作と予想する。 プラスチック製のスポーク部分を新規に組付ける作業であれば容易にできるが、既にスポーク部分が組付けられている場合には専用の治具が必要であろう。 このため、この方法は不可能と判断する。

 第2の方法は、第1動輪のギヤが第3動輪に移動するため、ギヤ駆動が無くなってしまう。 ただ、第2動輪からロッド駆動により力を伝達してもらうことは出来るが、第2動輪のリターンクランクピンとサイドロッドの穴はガタの大きい組合せとなり、ロッド運動に問題が発生する恐れがある。 また、動輪軸のギヤがフレームや動輪押さえと干渉するので、干渉部分を削り取る必要がある。 でも、この方法はやって見る価値はありそうである。

 

■ 動輪交換の作業

 第2の方法で実施してみることにする。 まず、第3動輪軸に入るギヤが、左側のフレームと干渉するため、その部分をルータで削ることにした。 回りの肉厚も充分なので強度的には問題無いと判断する。 下の写真に削った状態を示す。 工具はエンドミルを使用した。 また、動輪押えもギヤと干渉するので、その部分を第1や2動輪と同じ様な形に削り取った。

 

 

 装着状態を上に示す。 動輪の回転はスムーズで何ら問題は無かった。 サイドロッドは分解することなく、単に第1動輪と第3動輪を入れ替えて組付けたので、サイドロッドの油壺が上下逆となっている。 テストに何ら問題ないので、このままにしている。

 

■ 走行試験の実施

 無事組付けられたので、早速走行テストを実施した。 低速ではやや不安定で車体を揺らしながら走行していたが、全般にはスムースの走行していた。 問題無いと判断して動力特性を測定した。 気にしていたロッドの動きは問題ないようであるが、低速走行では多少影響が出ているのではないかと思われる。

 まず、速度特性を測定した。 動輪を変更する前のデータは、マイコレクションの 「C56-160号機」 に示したデータを参照下さい。 バラツキ具合などを勘案しても変化は無いと言えよう。 前進時の電流が後進時より大きいのは、前照灯が点灯しているからである。

 

 次に牽引力特性を測定する。 動輪を変更する前のデータは、トラクションタイヤを元に戻した状態の 「マイクロのC56-160号機のバック走行特性」 に示したデータを参照下さい。 上段に前進走行時のデータを、下段に後進走行時のデータを示す。

 

 

 予想どうりに、粘着牽引力は前進時は少しアップし、後進時はダウンしているが、前進と後進の差は縮少している。 また、駆動側と制動側の粘着牽引力のバランスも良くなっており、何ら問題は見受けられない。 むしろこちらの方がベターな特性と思われるが、如何でしょうか。

 我がミニレイアウトで走行させても問題無くスムースに走行している。 ポイントも問題無く通過している。 ただ、極低速は苦手のようで、少しフラフラした走行を見せている。

 

■ まとめ

 今回も、C56モデルだけが何故第1動輪にトラクションタイヤを装着しているのか? と言う疑問に対する答えを見出す事が出来なかった。 逆に、他のモデルのように第3動輪に装着する方が良いのではないかとも思えてしまうのである。

 この車両は当面このままの状態で使用してみて、何か問題が発生しないか見て行くことしよう。 サイドロッドの油壺は逆さまのままで・・・・・・・・・・・。