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Nゲージ鉄道模型 マイコレクション マイクロエース製蒸気機関車の動力機構一覧

 マイクロエース製蒸気機関車シリーズについて、手持ちの車両の動力部の構成を一覧表にまとめてみた。 その中から、設計陣の考え方が汲み取れないかと、大それた考えでチャレンジしたものである。

 

■ マイクロの蒸気機関車のシリーズ

 マイクロエースのホームページなどの資料をもとに、発売されたモデルを一覧表にまとめた。 モデルは、31種160形式にも及ぶので、リスト表示が大変なので、Excel のファイルで提供する。

           マイクロエース 蒸気機関車シリーズ Nゲージ: micro-sl-list.xlsx (Excel のファイル) 

 このリストの中で、手持ちの車両をだけを抜き出したものを下に示す。

 これらの車両を分解調査して、その構造についてまとめてみよう。

 

■ 構造的な特徴

 実施した内容は、動力部の構成について構造的な特徴を整理しものである。 構造部のイラストは、各車両の分解調査のページから抜き出したものであり、ほぼ同じスケール( 1mm = 6 pixel )で表示している。

 そして特徴欄に、動輪の駆動方法の違をチェックした。 この動輪の駆動方法については、ギヤ連結とロッド連結の方式が有るが、その記号は、

     G: ギヤ連結    R: ロッド連結   r: ロッド連結であるが、穴とピンのガタが大きいもの   T: トラクションタイヤを履いている動輪

を示している。

 また、モータについては同じサイズのモータと判断したが、ここでは、スキューの有り無しをチェックしてみた。 ○はスキュー有り(目視で見ると、約10度ぐらい)、 ×はスキューの無いモータであった。 結果的には全て○であったが・・・・・。

 また、リストは発売順に記載している。

 

車両番号
品番
発売年
動力部の構成
特徴
第1
第2
第3
第4
Mスキュー
D51-498
A9501
1996年
GR
G
r
GRT

●第2動輪のロッドには、ロッドピンが無いため、ギヤだけで回転させている。

●第3動輪のロッドピンは、大きなガタが設定されている。

●第1動輪を駆動するアイドラギヤは、第2動輪のギヤを介して連結されている。

●ウォームは左右を軸受で保持されており、モータ軸とはシリコンチューブのジョイントで連結されている。

18688
A6102
1999年
GR
Gr
RT

●エンジン部の長さが短いため、モータを第3動輪の上まで挿入している。 このため、第3動輪のギヤ駆動が困難となっている。

 

C56-125
A6302
2000年
GRT
Gr
R

●8620型のモデルよりも、モータ位置をさらに奥に入れるために、ウォームホイールの位置を前に進めている。

●このC56モデルだけ、トラクションタイヤを第1動輪に履かせているが、その理由は不明である。 なんで?

 

C58-98
A7202
2001年
GR
Gr
RT

●1C1配置により、A9501(D51型)モデルのように構成すれば、第3動輪をギヤ連結出来るようになったはずであるが、何故か第1と第2をギヤ駆動している。

●第1動輪は、第2動輪のギヤから小さなアイドラギヤを3個も使って連動させており、設計者の苦心の策か。

●ウォームは、これ専用の部品で、外形も大きくしている。

C50-110
A7401
2001年
GR
Gr
RT

●実車と同様に、8620型と同じ設計と思われる。

 

39679
A0327
2003年
R
G
GrT
R

●第1動輪と第4動輪はロッド連結のみであり、第2動輪のロッドにはロッドピンが無いため、ギヤ連結のみになっている。

●第3動輪のロッドピンは、大きなガタが設定されている。 従って、ロッド連結されている第1と第4動輪の回転は、大きなガタを介して回転していることになり、これでスムースな動きになるのか心配となるが、実際は問題なさそうである。

●第4動輪がギヤ駆動出来なかったので、ギヤ駆動されている第3動輪にトラクションゴムを履かせている。

●このモデルのみ、ウォームホイールの小ギヤの歯数は Z = 16 枚である。

C12-164
A4294
2004年
GR
Gr
RT

●A6302(C56型)と形状や寸法が同じであり、同じ動力部と見られる。

●モータの端子が赤色から白色に、即ち銅板から洋白(?)板に変更されているが、これ以後のモータも全てこの白色になっている。 この前後に変更が有ったようである。

C56-160
A6308
2007年
GRT
Gr
R
●A6302(C56型)やA4294(C12型)と形状や寸法が同じであり、同じ動力部と見られる。
C51-247
A6603
2007年
R
Gr
GRT

●2C1のパシフィック形式であるため、モータの配置が楽になったようで、第3動輪を駆動機構のメインにする事が出来ている。

●第3動輪と第2動輪をギヤ駆動とし、アイドラギヤは1個のシンプルな構成である。

●ウォームは左右を軸受で保持されており、モータ軸とはシリコンチューブのジョイントで連結されている。

C62-2
A9810
2008年
R
Gr
GRT

●2C2のハドソン形式で、動力機構はC51と同じ構成である。

●フレームは、ウエイトを廃したストレートなダイキャストブロックで、改良型と言われているもの。

●フレームには3本の使用していない軸が残っている。

●ウォームは左右を軸受で保持されており、モータ軸とはシリコンチューブのジョイントで連結されている。

 

D51-498
A9536
2008年
R
G
r
GRT

●動力改良と称されるモデルである。

●第1動輪を駆動するアイドラギヤを廃止して、第1動輪のギヤ駆動を中止している。 このため第1動輪はロッド連結のみになっている。

●フレームは、ウエイトを廃したストレートなダイキャストブロックで、改良型と言われているもの。

●ウォームは左右を軸受で保持されており、モータ軸とはシリコンチューブのジョイントで連結されている。

 

■ まとめ

● マイクロエースの蒸気機関車シリーズは、31種160形式にも及ぶが、小生の所有している車両は、わずかに9種の11台のみである。 そして今回の調査は、まさに “抜取調査” そのものであるため、シリーズ全体の動向をとやかく言える立場ではないが、抜取調査として考えるならば、その一環を覗き見る事が出来たような気がする。

● 幸いに、マイクロエースの蒸気機関車シリーズ第1号機を手に入れる事が出来たので、それ以降の構造の変遷を多少なりとも知ることが出来た。 僅か11台ではあるが今回の調査を実施してみて、次のように言えるのではないかと考えている。

  1. ロッド連結は、一番前の動輪と一番後ろの動輪をガタを詰めたピンで結合し、ロッドの運動を規制する。 そして中間の動輪とは、ガタを大きくしたピン結合か、あるいは連結しない構成にして、動輪のスムースな回転を確保する。 ロッド連結しない動輪は当然ギヤ駆動が必要となる。
  2. ロッド運動を規制する動輪は、モータからギヤ駆動する必要があるが、その位置は原則的にはトラクションタイヤを履いた最終動輪が望ましいと思う。 しかし、モータの位置やギヤ配置の問題で、この原則が実行出来な場合に、いろいろ工夫しているようである。
  3. ロッド連結は、一番前の動輪と一番後ろの動輪をガタを詰めたピンで結合し、ロッドの運動を規制しているので、この二つの動輪を同時にギヤ駆動すると、ロッド連結とギヤ連結が干渉する心配がある。 それぞれのガタで動きを逃がすか、部品精度を上げてスムースな動きを確保する必要があるだろう。 この問題に該当するモデルは、1996年発売のD51のみであり、その後のモデルはこの問題を回避しているが、技術者の意図的設計なのだろうか。
  4. マイクロエースは短期間に31種類の機種を開発しているが、同じ設計思想と、部品の共通化で対応していると思われる。 例えば、ウォームホイールは、歯数が24と13の2段ギヤを殆んどの機種で共通使用している。 今回の調査では、動輪の小さい96型のみ、歯数が24と16のギヤを使用している。 また、アイドラギヤも、歯数が、13、24、29、31の4種類のアイドラギヤを組合わせて使用している。 モータは途中で一部変更されている様であるが、基本寸法からみて、最初から同じ物を使用しているようである。
  5. 車種によって、外観のボディはひとつづつ異なるるのは理解できるが、動力ユニットの本体となるフレームも、一部を除き、それぞれ新規に製作している様である。 これらは専用の金型が必要な部品であり、シリーズ展開するには相当な苦労(投資費用など)があったのではないかと推察する。 その点、電車などは、「20m 級動力ユニット」とかの単位で共通化出来る様なので、投資効果は高いように思われる。

● 模型車両の動力特性を決めるファクタの一つである動力機構の減速ギヤ比は、色々な数値を設定している。 ウォームホイールは殆んど同じ部品を使用しているので、動輪のギヤを設定すれば同じギヤ比が設定出来るはずである。 しかし、車両の動輪直径は、実物車両に合わせて設定しているので、この動輪直径と絡めてギヤ比を設定する必要があると思う。 動力特性の速度特性測定値を見ながら、このギヤ比と動輪直径の関係を調べてみたい。