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鉄道模型実験室 No.111  モータ特性を測定しよう その1 構想とセンサ

■ はじめに

 またまた、厄介な虫が動き始めました。 以前から宿題にしていた ゛モータの特性を自動測定しよう″ と言うテーマに取り掛かることにした。 このテーマは、「動力車の調査」にてご紹介しましたもので、 ・・・・・・鉄道模型工学の探求の一環として、動力車の分解調査と共に各要素の特性を測定し、 より突っ込んだ動力特性の解析を実施する予定です。・・・・・・・・として取り組んできたものですが、その内容は、

 ***********   現在、調査を中断中です ********
1) モータ単体でのトルク測定方法を探しています。 測定の効率化と精度向上のため、動力車両の様に Arduino を使用した自動測定方法で実施したいと考えていますが、小さなモータトルクを検出する電気的方法がまだ見つかっていません。 実現可能な方法をあれこれと考えてみましたが、未解決の状態です。

2) 車両の牽引力測定時に、モータの端子電圧か、あるいはモータ回転数を測定出来ると解析の精度が向上するのですが、その方法がまだ未解決の状態です。 走行中の車両のモータ端子電圧が把握できれば、車両内での電圧降下量が計算出来ると共に、モータの出力状態が推定出来ます。 また、モータ回転数が測定出来れば、車輪のスリップ率が計算出来ると共に、こちらからでもモータの出力状態が推定出来ます。 モータ端子電圧か、あるいはモータ回転数のどちらかでも計測出来ればと、その計測方法を模索しているのですが・・・・・・・・・。  ⇒ こちらの課題は既に解決済みです。

        ・・・・・・・・・・・  このような理由で、調査を中断しています。 もし、計測方法が解決できれば再開したいと思っています。

の状態でありました。

 そして、2016/6/16に報告した「モータの無負荷回転特性を測定する」では、モータ単品での、電圧、電流、回転数の計測を測定できるようになったが、残る課題は、小さなモータトルクを検出する電気的方法がまだ見つかっていない ことであった。 そこで、今回はこの難題に挑戦しようとするものである。

 

■ 測定トルクの目標

 Nゲージで使用されているモータの回転トルクの値について、今までの測定データより、実質的には 0〜30 gfmm と考えているので、測定範囲は 0〜50 gfmm とする。そして、測定分解能は 1gfmm 以下とし、精度は数%程度を希望することにする。

 以前に実施したモータ単体でのトルク測定として、2012年6月頃に実施した「モータのトルク特性を測定 その2」などがあるが、このとき糸を巻き付けジョイント受け部の外側の外径は直径が 3.1mm である。 すると糸の張力は、0〜31グラムとなり、台秤を使えば測定できる領域である。 しかし、直径が 3.1mm の部分に糸を巻き付ける点に、径の値に対する精度の問題を心配する。 せめて5〜10mm の直径が欲しいところである。 すると、それだけ測定する張力の値が小さくなるので、いかに精度よく張力を電気信号に変換するかが、課題となる。

 

■ 微小トルク測定のアイディア

 先回の測定方法を参考にして、今回検討するアイディアを右の図のようにイラストにしてみた。

 プーリーに巻き付けた糸とプーリーとの間に摩擦力を発生させて、糸の両側に発生する張力の差をレバーを使って拡大させて台秤で測定しようとするものである。

 この張力の差は右のイラストに示す張力バランスレバーを使えば、張力プーリーからの張力の差をバランスレバーのトルクとして伝達することになる。 すなわち、張力プーリーのトルクを Tp とすると、張力の差 儺 は、張力プーリーの直径をφD とするならば

  儺 = Tp ・2/D

となる。 そして、拡大レバーに作用する力 F1 は、その作用点の位置が右の図のように L2 にあるならば、バランスレバーの糸のレバー長さ L1 との拡大率で、

  F1 = 儺 ・L1/L2

となる。 拡大レバーの作用長さを L3 と L4 とすると、台秤に作用する力は、

  F2 = F1 ・ L3/L4

となる。  なお、イラスト図では 小文字のエルを使用しているが、文章の中では小文字のエルは数字の1と同じに見えてしまうので 大文字を使用した。

  ここで、張力を発生させる方法としては糸の両側を引っ張ってプーリーとの間に摩擦力を発生させればよいのである。 その方法は、張力バランスレバーの中心を下方に引っ張ることによって実現でき、さらにその力を変化させることによって、糸の張力自身の値を変化させることが出来るのである。 このバランスレバーの中心を押さえるレバー、即ち図に示す与圧レバーを横から輪ゴム等で引っ張れば、その力を変化させることが出来る。 この張力の変化は、結局は張力プーリーの負荷、即ち接続したモータの負荷を変化させることになる上に、発生した負荷トルクを張力バランスレバーや拡大レバーを通して台秤に伝達することになる。

 なお、張力バランスレバーと糸とを結ぶ点は、糸とレバーの半径が直角になる位置に設定して、レバーが少し回転してもレバーの有効半径の変化がほとんどないように配慮するようにする。 当然、その他の作用点についても同様な配慮は必要である。 また、荷重を計測する方法は、電気的に実施することが目的であるが、イラストにも示したように、台秤で読み取りながら測定する半自動 でも良しとした。

 なお、このイラスト図の原型は、2013年5月の技術メモに記されていたものを、少し修正して書き直したものである。 かれこれ3年も前から温めていたアイディアなのである。 その時の計算メモには、D = 10mm 、L1 = L2 = 50mm 、 L3 = 100mm 、L4 = 20mm と想定して、Max 50 グラムの荷重を測定できるセンサーを探していた。

 

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■ 圧力センサーを使用してみる

 2014年10月に、秋月のサイトで圧力センサーの項目が目についた。 右の写真である。 アクティブエリアに加えられた圧力で電気抵抗が変化するセンサーで、電子機器のタッチ操作部などに利用されているとのこと。 リモコンやキーボードに使われているものと同じ原理のものである。 感圧範囲が 0.1N 〜20N であるので、10〜2,000 グラムの計測範囲である。

      ・・・・・ 古い人間には、ニュートンよりもグラムの方が分かりやすいのです・・・・・・・・。

 レバー比を大きくすれば使えるかもしれないし、抵抗値の変化するので、その出力はを電圧に直せば簡単にArduino の取り込めるのでは! と思ってこの部品を入手した。 しかし、部品を見ただけで本当に測定できるのか半信半疑のままで、放置していた。

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 今回のチャレンジにあたり、まずこのセンサーを使ってみることにした。 部品は、Interlink Electronics Inc.の圧力センサー FSR400 である。 添付されていた参考資料の中のグラフを左に示す。

 センサーの直線部を使用するとすると、センサへの加圧力として、50〜1000グラムの範囲を使ってみるkとにすると、センサの抵抗値は10KΩ〜1KΩと変化することになる。 特性グラフは log - log のグラフであるが、この間は直線的な変化なので数式化可能である。 また、Arduino を使って抵抗値の変化を計測すrには、プルアップ抵抗などを使用して電圧変化を観察し、左のグラフに習って作用荷重に変換することが出来そうである。

 ただし、かなりのレバー比を使って、力増幅が必要であろう。 即ち、L3/L4 = 1000×5/50×40/50 = 80 の拡大率が必要となる。 これは1段でのレバーでは拡大出来ないので2段式の拡大レバーが必要となる。 そして、各段では約9倍のレバー比が求められる。

 

 

■ 2段式拡大レバーの制作

 このような計算のもとに、グラフ用紙に大まかな設計図を描き、拡大レバー部の制作を実施した。

 プラ板の在庫を見ると、厚さが1mm と2mm のものしかなかったので、強度のいる部分は2mm の板を、通常は1mm の板を使って工作した。 勿論、今までのリサイクル品や工作残品は加工の手間を省くため、使えるものは何でも使用した。 ポイントなる支点部は、φ3.0mm のアクリル棒を使用した。 硬さと平行性などを考慮したのである。

 まず、一番力のかかる1段目(下側)のベースを作成した。 下左の写真。 厚さ 2mm のプラ板を接着剤を使って組立てた。 下右の写真は、1段目のベース部分の支点である。φ3.0mm のアクリル棒が収まるように、厚さ 2mm のプラ板で両側に土手を作っている。 支点の棒はフリーである。

 1段目と2段目をつなぐ部分を下に示す。 支点部分は、厚さ 3mm のプラ板に接着して一体化している。 1段目には作用点が移動できる様に3個の溝を用意した。

 下左の写真は、2段目(上側)の支点の部分である。 また、その支点を支える部分を右の写真に示す。

 当初の設計図とは形状や寸法はかなり異なって来たが、弱そうだと思われた部分は適当に補強している。

 組み上がった状態を下に示す。 圧力センサーは、φ5mm 高さが5mm の消しゴム(壊れたシャープペンの消しゴムを使う)をレバーの穴に差し込んで、その上に載せて移動しないようにセロテープで止めている。 下右の写真。

◆ テスト1

 センサーの出力端をテスターにつなぎ、その抵抗値を観察することにした。 その時の実験状態を下右に示す。

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 一円玉を上のレバーの荷重点に載せて(右の写真)、その時の抵抗値を読み取ることにした。 一円玉は、一つがぴったりの1グラムであり、7個まとめて測ってても、7.0 グラムだったのには驚いた。

 一円玉の枚数と圧力センサーの抵抗値の測定結果を下に示す。

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 0枚から順次枚数を増やして行き、また減らすことを2回繰り返した。 その結果を示す上のグラフから読み取れることは、センサーとして使用するには落第である事である。 再現性やドリフトなど、何をはかっているのか不明なのである。

◆ テスト2

 問題点として、レバー構成の問題なのかセンサーの問題なのかを判別するために、圧力センサーの下に台秤を用いて実際の荷重も測定することにした。 しかし、台秤とレバー支持部が干渉するので、下のレバーの作動点を中央寄りに移動させた。その位置は、固定点から40mm 離れた点に圧力センサーの荷重点を持ってきている。 ちなみに下のレバーの荷重点長さは、110mm であり、上のレバーのレバー長さは、105mm と 10mm である。 このため、トータルの荷重拡大率は28.9倍となる。

 そして、テスト1と同様の測定を実施した。 右の写真。 測定結果を下のグラフに示す。 これも期待外れである。

 1)1円玉の重さとセンサー部の荷重が比例しない。
非線形である。 これは、消しゴムのつぶれ方が問題なのだろうか。 それなら硬い接触子で実験してみよう。
 2)圧力センサーの抵抗値と荷重の関係
下右のグラフに示すように、この範囲では比例関係には見えるが、抵抗値のバラツキが大きい。 このためこの範囲での使用は無理と判断する。

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 ちなみに、上のレバーを取り去った状態では、12.7グラムで 67KΩの抵抗値であった。

◆ テスト3

 台秤とレバー底面の間をφ3.0mm のアクリル棒で接触させるようにして、再度テストを実施した。 その結果を右のグラフに示す。 上の中央のグラフと比較して、線形性が大幅に改良されているので分かる。 この線形性はOKだが、データのバラツキが大きく、ヒステリシスもまだ改善する必要がある。

 

◆ テスト4

  改善策としてまず、台秤への接点は M 3 mm の小ねじを使って接触させることにする。 そして台秤への傷つきを防止するために、1mmのプラ板を挟む。

 さらに、レバーの拡大率を小さくし、さらにレバーの重さを軽くして初期荷重を減らす工作をした。 これは、各接触点の摩擦の影響を小さくして、ヒステリシスを減少させて、かつ直線性の向上を期待した。

 詳しくは、レバー比が10倍程度になるように上のレバーの荷重ポイントを変更し、さらに適当ながら軽量化のための肉抜きも実施した。 そして、テストの状態を下に示す。 

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 テスト結果を右に示す。 一円玉を10枚まで増減させることを2回繰り返している。 台秤で計測されたデータより、バラツキやヒステリシスが小さくなっていることが分かる。 また、レバー比は 8.7 と計算された。

 

■ まとめ

 今回の一連のサーベイテストにより、当初考えていたアイディアの実現性が見えてきた。

  1. 2段レバーによって拡大率を大きくとることは出来るが、ヒステリシスや再現性などの問題も大きくなる。 このため、拡大率は10倍程度に押さるのが良いであろう。 そして2段式にする必要が無いかもしれない。
  2. レバーの支点は簡単な方法を使ったが、ピポット方式などの配慮が必要かもしれない。 Nゲージの車両には立派なピポット式軸受けが普及しているので、この車軸と軸受けを活用するのはグットアイディアと思う。
  3. 当初検討した圧力センサーは、今回の目的には合致しないことが分かった。 参考資料に示された再現性、ドリフト、ヒステリシスのどのデータを見ても無理であることが予想されたが、きっぱりと諦めることが出来た。 ただ、力の入力装置としての使い方があるであろう。
  4. この圧力センサーに代わるセンサーを Amazon で偶然見つけてしまった。 定格荷重が100グラムのロードセルである。 メーカーは不明で、販売が工場直送消費者家電オンライン小売ショップ - Uxcell 、工場直送価格をウリにする何でもアリの香港の小売ショッピング・モールのもので、Amazon が取り扱っていました。 よく見ると自分が使用している小型の台秤にも使用されているセンサー部品の様です。 42×12×6mm のアルミ合金製の平行リンクのような片持ち梁に、ひずみゲージが貼ってあり、ブリッジも形成しているようです。 市販の台秤用の部品と思われるので、精度も価格もバッチリですね。 ただ、入手するには注文してから1週間ぐらいは掛かるようなので、まだ未入手です。
  5. さらにうれしいのは、ブリッジ式歪ゲージのアナログ出力をデジタルに変換してくれるモジュルも売っていました。 \168.- で! 重量計り専用のA/Dコンバータ HX711を使ったモジュールの完成品である。 そしてArduino への入力方法もサンプルとして示されていたが・・・・・・・・・、専用のライブラリーを使う必要がありそうなので、スケッチに四苦八苦するかも?

 さて、次回はトルク測定部の検討結果を紹介しよう。

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 2016/9/20 作成