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鉄道模型実験室 No.114  モータ特性を測定しよう その4 拡大レバー部

■ はじめに

 色々な予備実験の結果をもとに、測定装置の仕様を決めて、測定可能な装置として仕上げることにする。

 

■ モータ用の微小トルク測定装置の仕様

 もう一度、当初の計画に戻って、装置の構成仕様を決めて行こう。 

 ここまでは、今までの構成を使うとして、拡大レバーのほうの構成を見直すことにした。 レバーの支点部分をKATO製台車のピポット軸受けを使うことにし、さらにレバーの拡大比率を一けた台にする。 台車は、スハ44台車 TR47(品番:5216D)のストック品があったので、これを使用する。 この台車の軸間距離は 16.0mm なので、これに合わせて再度図面を引きながら、構成とレバー類の長さを設定した。

 レバーの拡大比率は、 L1・L3/ L2・L4 = 7.14 となる。  最大測定値の 50 gfmm の時、台秤の荷重は、119グラムとなる。 ロードセルは 100 グラムと 150 グラムの2種類を用意するので何とかなるであろう。

 なお、力の検出部は Amazon で見つけた Uxcell で販売している 定格荷重が100グラムのロードセルを使い、ブリッジ式歪ゲージのアナログ出力をデジタルに変換してくれるモジュルを介して Arduino UNO に取り込むことにする。 市販には、イマダ 普及型デジタルフォースゲージ DS2-2N のような本格的な計測器が売り出されている。 最大荷重は 200gf、 最小単位は 0.1gf 、精度が ±0.2%F.S.、出力機能としてデジタル(シリアル:RS232C)もあるので、今回の計測にはぴったりの計測器であるが、およそ7万円もするので手が出せない・・・・・・・・・・・・!。

 ホビーで楽しんでいるので、工夫、工夫で対処しよう。

 

■ 拡大レバー部の制作

 ポイントとなる、支点のメカを作成する。 KATO製台車の一方の車軸を 0.3mm のアルミ板を使って土台に固定する。 下左の写真。 これを新しく工作したレバーに小ねじを使って固定した。

 レバーは支点を中心にバランスするように、反対側も伸ばし、そこに水草の重りを貼り付けてバランスをとるようにした。 下左の写真。 この状態ではまだバンスが取れていないが、リンク類を組み立てた後に調整するが、それほど厳密には考えていない。

 この拡大レバーとバランスレバーとの間は、リンクで連結することにする。 レバー長さが固定されるようにするためである。 厚さ 1mm のプラ板2枚を、厚さ2mm のプラ板を介して張り合わせ、φ1.0mm の真鍮棒で連結させた。 上右の写真。 そして、リンク類を組み立てた状態を下に示す。

 このリンクセットを測定台に設置した状態を下に示す。

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 台秤は、台車のもう一方の車輪を使って直接当たるようにしているが、車輪のフランジ部分が鋭いので、傷つき防止のために1o厚さのプラ板をかましている。 そして、上右の写真のように、バランスレバーからの作用点、台秤に作用する車軸の中心、レバーの支点となる車軸の中心が水平に一直線となる様に設計している。

 また、与圧レバーは、水平から少し下がった位置でストップするように、レバーの下辺側に2oの真鍮棒でストッパーを作った。 上左の写真ではレバーがストッパーに当たっている状態である。

 今回の新しい工作により、右の写真の様に、またまたジャンク品が発生してしまった。 いつの日か、再び利用できることを期待してジャンク箱に収めて置こう。

 

■ リンク系の校正

 リンク系を新しく作り直したので、張力と台秤の荷重の関係を検証する。 方法は先回と同様であるが、与圧レバーには少し荷重をかけている状態で測定している。 回転部や連結部の摩擦を少し考慮した状態にしているが、その程度は曖昧である。

 テストは、一円玉をかごの中に入れていき、その時の台秤の値を読み取っている。 一円玉は一つずつ増やし、10個目からは逆に減らしていく動作を2回繰り返した。 その結果として、一円玉の個数と台秤の数値を下のグラフに示す。

 

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 上左のグラフはその時の様子を連続折れ線グラフで示し、右のグラフはこれらの値を近似直線を当てはめて示したものである。 このグラフより、バラツキはあるものの、ドリフトは殆どない事ことが確認されるし、レバー比が約 7.2 倍であることも読み取れる。 設計値では7.14 であったので、ほぼ設計通りに仕上がっていることが分かる。

 次に、このグラフの縦軸と横軸を逆にして、台秤の数値から張力プーリーの接線力を推定する推定式を求めることにした。 そのグラフを右に示す。

 このグラフより、張力プーリーの接線力Y と、台秤の数値 X との関係は、

    Y = 0.137684 * X - 0.032772

であることが分かる。 この推定式をもとにして計算した重さと、一円玉の重さの差を計測誤差とみなしてグラフ化したものを下に示す。

 グラフは、誤差の値とパーセント表示のものを示すが、パーセント表示の分母はその時の一円玉の重さとしている。 計器の場合、誤差のパーセント表示は一般的にはフルスケールに対する誤差の値で定義するものであるが、ここでは計測値のもっともらしさを表現するために、このような比率で計算したものである。

 推定値のバラツキは時々飛び出している値があるものの、全体的には小さく固まってきているように見える。

 

 また、測定順になるようにグラフの横軸を変えてみたのが下のグラフである。 時間の推移による変化、すなわちドリフト現象はかなり改善されたことが分かる。

 

 次に、張力プーリーの接線力をプーリーのトルクとして計算し直したグラフを下に示す。

 

 このグラフより、台秤の数値からプーリーのトルクを換算する推定式が求められる。 測定目標の 50gfmm にはまだ届いていないが、測定分解能の 1gfmm 以下は充分に満たしていると判断する。

 

■ 実際のモータを測定してみる

 微小トルクは何とか測定できそうなので、実際のNゲージ用のモータをテスト的に測定してみることにした。 対象としたモータは、過去に測定したことがあるKATOのEF510-1 号車のモータを選定した。 2012/10/15に報告した 「動力車の調査 > KATO EF510-1」 である。

 測定装置の設置状態を下に示す。  モータへの電力供給は安定化電源を使用し、Arduino と シールドは、モータの無負荷回転数測定装置で作成したシールドを使用した。

 回転数センサーは、2016/6/3作成の「電車形動力車の動力特性の測定を始める」で作ったNo.6 のセンサーを使用した。 2016/2/2作成の「有線通信のための信号ユニットを作る」で作成したNo.5 のセンサーと同じ構造であるが、測定する回転軸の方向が90度違っており、センサの設置スペースと回転軸の方向によって選択している。 下右の写真にその外側が映っているが、取り付けはセロテープで貼り付けた状態である。

 なお、回転プーリーの白黒マークは1回転当たり4回のパルスが出る様にマーキングした。 そして、計測回数はシールドのジャンパーピンでにて512回に設定する。

 スケッチは、「モータの無負荷回転特性を測定する」にて作成したものをそのまま使用したが、データ処理のEXCELシートは台秤の荷重を記入する欄を新設し、計算式によってモータトルクに換算し、グラフに表示させるようにした。

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◆ 測定結果

 まず最初に、Arduino から送信されてきたシリアルデータをモニタ画面で確認する。 データは、電圧、電流、測定回数、測定時間の値を送信してきている。 右図を参照。 また、台秤のデータも正常に作動していた。

 シールドとスケッチが正常に作動しているこtが確認できたので、電圧を4ボルトに設定し、与圧レバーの荷重をいろいろ変えながら、モータのトルク測定を実施した。

 その時の結果を上のグラフに示す。 このグラフを見て思わず興奮してしまった。

 大成功だ !                                                        

 なんと綺麗なグラフであろうか! データはバラツキも少なく一直線に並んでいる。 苦労のし甲斐があったのだ。

 そして、モータトルクに換算したグラフを作成し、その結果を下に示す。

 

 ちなみに、 2012/10/15に報告した時の測定データを下に示す。

 測定精度を考慮すると、4年前の計測結果とほぼ合致していることが分かる。 データのバラツキからすると、今回のデータの方が信頼性は高いと判断しても間違いはないであろう!

 また問題点として、トルクの小さい領域では輪ゴムを緩くしても測定できなかった事が挙げられる。 これは、与圧レバーとバランスレバーの自重によって、糸に張力が発生して最小トルクがこれよりも小さくならない状態であった。 このため、最後にはレバーを持ち上げて測定したがレバーの自重を低減させる工夫が必要であろう。

 

■ まとめ

 今回の実験で、当初のアイディアのような構成によって、モータの微小トルクが測定出来ることが分かった。 注文しているロードセルの入手を待って荷重データの取り込みも自動化することにしよう。

 なお、このトルクと回転数のグラフを見ていると、Nゲージ用のモータの特性は、トルク測定値の多少の誤差についてその影響が比較的少ないことが分かる。 それよりも電圧の変化の方が、回転数に及ぼす影響が大きいのである。 と言うことは、トルク測定にそうカリカリすることはないんだ、適当な値が出ておればOKと言うことなり!

 でも、それなりのデータが得られないと信頼性がなくなるよね。

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 2016/9/25 作成