HOME >> 鉄道模型実験室 > TOMIX製ユニットのポイント駆動回路出力波形の観察
■ はじめに
登山鉄道自動運転システムにおいて、ポイントの作動が不安定な状態がたびたび発生していた。 そこで「システムの制御状態の調査」に於いて、駆動回路の電圧波形を観察することにした。 その結果、我が設計のポイント駆動回路では12volt の電圧はバッチリと出しているものの、TOMIX製のパワーユニット N-400 では 20volt に近いし、裾も長いのである。 波形の面積をパワーと解釈するならば、倍以上も違うことが判明した。 ポイントの作動が不安定な現象は、駆動回路のパワー不足の可能性があると判断し、今回使用しているTOMIX製のポイントに対応しているいろいろなパワーユニットでの出力波形を観察することにした。
■ 実験装置
まず今回の実験装置を紹介する。 大袈裟に実験装置と言っているものの、実際は下記のように簡単な組み合わせである。 オシロが主役である。 高価な投資をした甲斐があったのだ。
さて、オシロに信号を入れるプローブの取り付け位置を下に示す。 先回しようした配線に少し手を入れた。 どうせ測定するなら電流も測定しようと考えて、マイナス側の配線上に 0.22Ωのシャント抵抗 を挿入し、その電圧差も測定することにした。 プローブの取付け状態を下右に示す。
測定する対象は、まず、ポイント毎の差異は無いかどうかを確認し、その後、手持ちのTOMIX製パワーユニットをそれぞれ調査した。
■ ポイントによる違いを観察する
用意した4個のポイントについて、購入時期は不明であり、同じ品番(右左は別であるが)なので品番による分別は出来ないが、とにかく PR140-30 と PL140-30 の各2個を用意した。
測定はポイントの切り替え時に発生する波形をトリガイベントとし、このトリガイベントが発生すると、一度だけ波形を取り込み stop する設定にしている。 そしてこのデータを画面イメージデータと波形データの両方を保存して、後から解析できるようにした。 この際、マニュアルを読んで勉強しました。
下に示す画像データは、この画面イメージ・データを示したものである。 左の画面が直進状態から分岐する場合で、右の画面はその戻りの場合のパルス状態を示している。 そして、CH1 (黄色)は電圧データを、CH2 (青色)は電流データを示している。 なお、トリガ設定の方法がまだ充分理解できていなかったので、画面の中央が、パルスの始めだったり、終わりだったしているが、お許し下さい。 ポイントの作動方向によってパルスのプラス・マイナイスが逆転するので、トリガ設定を立上がりか、立下りかにそれぞれ設定し直す必要があったのである。
また、画面の背景を白黒反転させる事ができたので、白画面にしてみたが、見難いですね。 また、駆動させたパワーユニットはN-1001-CL を使用し、ポイントコントローラで切り替えを実施している。
● ポイントNo.1: 右分岐品、 品番 1231、 ロット番号 17NJE
● ポイントNo.2: 左分岐品、 品番 1232、 ロット番号 36DJG
● ポイントNo.3: 右分岐品、 品番 1231、 ロット番号 49XJH
● ポイントNo.4: 左分岐品、 品番 1232、 ロット番号 86AJH
● まとめ :
個別に観察していても様子が解らないので、これらの画像をいつもの処理テクニックを使って重ねてみた。 それを下に示す。
この画像は、上の4枚の画像データを重ねているが、なんとピッタリと一致しているのである。 ただし、時間軸としては、ポイントコントローラの操作時間によってばらついているが、これはポイントコントローラの構造上の問題である。
即ち、ポイントの違いによる波形特性の違いは無いと判断する。 これは、駆動コイルの仕上がり品質が揃っているものと推測している。
■ パワーユニットの違いを観察する
ポイントの駆動コイルによる違いが無い事が確認できたので、今度はパワーユニット側の差異を調査しよう。 測定条件は上記と同じである。 ポイントは、No.1のポイントを使用した。
● N-1001-CL: 品番 5506、 ロット番号 JI 0404
● N-1000-CL: 品番 5502、 ロット番号 JG 01917・
● N-400: 品番 5505、 ロット番号 DJG90148
● N-401: 品番 KD-51、 ロット番号 DJG 67952
● まとめ :
個別に観察していても様子が解らないので、これらの画像を上記と同じように重ねてみた。 それを下に示す。
N-401 は週刊「昭和の鉄道模型をつくる」 で入手したユニットで、外観は異なるものの、波形はピタリと一致しており、内部回路は同一と思われる。 N-401 の内部回路については、「ポイントの切替駆動の制御方法」を参照してください。 また、N-1001-CL と旧製品である N-1000-CL は、同等と思っていたがパルスの裾の様子が異なる様に観察される。
そして、N-400とN-401は、内部回路でポイントを切り替えているが、N-1001-CL と N-1000-CL はポイントコントロールボックスを使用している。 そして、このボックするの構造は、「ポイント駆動ユニットの電圧波形」にて調査済みである。 KATO製のものは単純な構成であったが、このTOMIX 製のボックスは複雑な回路構成であり、スナップ作用の途中段階では、回路構成も理解できなかった。 今回の測定データを見ると、少しはつじつまが合ってきた。
ポイントコントロールボックスのレバーを中間位置で保持していると、N-1001-CL と N-1000-CL の新旧製品では様子が異なることが分かる。 旧製品の N-1000-CL ではゼロボルトに収束していくのに、新しいN-1001-CLでは4ボルト近辺に収束していく様子である。 そこで、レバーを中間位置に保持する状態で、再測定を実施した。
● レーバーを中間位置で保持、N-1001-CL:
● レーバーを中間位置で保持、N-1000-CL:
やはり違いは歴然としている。 新旧のユニットの回路が異なっていることは明らかである。
■ 波形の違いを詳細に観察する
今回の測定では、波形データをデジタル値として、CSVフォーマットにて保存することができている。 そこで、このデータをEXCELに落としてグラフ化した。 グラフは電圧波形と電流波形を示し、直進から分岐への操作時と逆の操作時に分けて表示した。 グラフの縦軸と横軸は、デジタルデータとして保存した時のポイントそのままを使用している。 測定時の垂直感度と水平時間の設定値から計算出来るが、上記の画面画像から換算してください。・・・・・・・・・無責任な!
とは言っても縦軸だけは計算しておこう。 オシロは一目盛が25ポイントとして記録するそうだ。 設定した垂直感度は、電圧を測定しているCH1 が 5V/div であるから、0.2volt/ポイントとなる。 50ポイントでは 10voltを示す。 電流を測定したCH2 では 100mV/div であるから 4mV/ポイントとなる。 シャント抵抗は 0.22Ωであるので、0.0182A/ポイントとなる。 100ポイントは1.8A であることを示す。
このグラフより分かったことを羅列しておこう。
■ まとめ
やはりTOMIX製のパワーユニットは、ポイントコントロール・ボックスを使用する方式と、使用しない二つの方式について、それぞれの駆動波形は異なっていることがはっきりした。 そして、我が設計回路よりもパワフルであるようだ。
そこで、回路のパワーアップはどうするか?
思案のしどころであるが、第2の案で検討してみるのがベターではないかと考える。 ブレッドボードなどで検討してみよう。
2017/7/23 作成