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動力車の調査  KATO EF81-81  その1

 

 動力車調査の第6弾として、KATOのEF81-81を選び分解調査することにした。 このモデルはフライホイール搭載動力ユニットの初搭載モデルであるEF81(3010)のマイナーチェンジ品で、その変更内容に興味があったので、その動力特性を調査することにした。

■01 車両の概要

 性能測定の前に、このモデルの概要と分解調査の結果を報告する。

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 このモデルの詳細は、マイコレクションの EF81 81 を参照して下さい。 重複記載あり。
この車両は中古ジャンク品を入手したもので、所定のケースが無かったために有り合わせのケースを使用しています。
模型車両の特徴: 前のモデル 3010-1 のモデルチェンジ品。 変更点は運転席のシースルー化、クイックヘッドマークの採用、ナックルカプラーの標準搭載など。
   ・ヘッドライト点灯  ・フライホイール搭載動力ユニット など。

メーカー KATO 商品名 EF81 一般色
品番 3021-1 車両番号 EF81 81
発売日 1997年発売
入手日 2011年1月 中古ジャンク品入手

 

 ◆ 構造を理解するために、車体を少しずつ分解していきましょう。 部品に付けられた黄色のマークは、再組付けの時に参考とする1エンド側を示すマークです。

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 主な部品の分解状態を上の写真に示します。 フライホイール搭載の第1弾モデルでる品番 3010 モデルの構造をそのまま踏襲したマイナーチェンジモデルである。

 左に示す亜鉛ダイキャスト製のフレームは、一体的に作られているタイプであり 、型番の刻印は初期型と同じ3010 である。 マイナーチェンジに合わせて運転席のシースルー化を実施する場合、金型の新規製作ではなく、古い金型をそのまま流用し、追加加工対応しているためと推定される。 台車やライトユニットはそのまま共通使用されている様子である。

  

 次に、モータとジョイント、およびウォームを右の写真に示す。 緑色のカップリングやモータ支持部材などは、初期のフライホイールモデルと同じ形状と思われるが、モータは、ブラシ部分のケースが構造変更されている。 モータ自体を分解したくないのでこの変更内容を詳しくは分からにが、性能向上か低価格化は分からない。 

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 このモータは、フライホイール付きで、2ポール5スロットのスキュー無しマグネットモータであるあり、基本構造は最初のモデルと同じ様である。 しかし、仕様等は変更されている可能性があり、マグネット端部は裏側に幅の狭い白色の色付けがああった。 これは、設計変更を示すマーキングを思われる。 外観寸法を左に示すが、 初期型と殆んどおなじである。

 

  

  次に、動力台車の全体を右の写真に示す。 歯車ケースの品番は 3010 で、台車の下のカバーの刻印も3010であった。  形状的にも変更がないようである。

 歯車の構成は、初期モデルと同じで、ウォームは m = 0.4 の1条ネジで、ウォームと噛合うホイールは Z = 19 である。 このホイールは2段歯車となっており、アイドラギヤを介して動輪につながる歯は Z = 17 であるが m = 0.3 で作られているので外形はかなり小さくなっている。 そして、動輪の歯車は Z = 17 であるので、動輪とホイールの回転は同じとなり、動輪を1回転させるためにはウォームを19回回転させる必要があるので、減速ギヤ比は i = 19 のギヤ列を構成していることになる。 これらの諸元は変更されていない。

 動輪径は、φ7.4mm で、内側の片方の動輪にトラクション・ゴムを履いている。 その他の諸元として、車体重量は 101.2 グラム、前後の台車の動輪に掛る荷重はそれぞれ 45.0 グラムであった。 運転席のシースルー化などで、車体の重さは16グラムほど軽くなっている。

 

■02 ライト基板の特性調査

 まず、電気回路上、モータと並列に挿入されているライト基板の特性を調査しておこう。

 

 この基板は、初期モデルと同じ形状をしており、裏側に回路が形成されている。 両端には前後のライト用の砲弾型のφ3mm LED が半田付けされており、 このLED と直列に記号が 271 のチップ抵抗も半田付けされている。 しかし、その位置は端部から中央部に変更されていた。

 この中央付近の導線部をクリップで挟み、電圧を掛けながら電流を測定したのが右のグラフである。 2 Volt 近くになるとLED が光り出すと共に、電流は一直線状に上昇する。 極性を反転しても同様な傾向を示し、対称な特性であることが判る。 電流の上昇勾配は 3.78 mA/Volt である事から、約 265 Ωとなり、チップ抵抗の規定値と合致する。 電流の立ち上がりはおよそ 2 Volt で、それまではわずかに電流が上昇しているが無視出来るであろう。

 

■03 モータ単品の速度特性とトルク特性の調査

 単品状態でのモータを測定する。 測定方法は、測定台へのモータの取り付け方法を改善した「EF66-51 その3」にて報告した方法で実施した。 最初に、速度特性として、モータに負荷を掛けないフリーの状態で、電圧と電流、および回転数を測定した。

 

 初期モデルのEF81-119 でも見られたモータの不安定な作動は、このモータでも同じであった。 モータの作動を観察するとどうやら2モードあるようで、それらの状態をグラフの橙と緑の点で示す。 この間を行ったり来たりしているようである。 この車両も中古品であったので、ブラシ部分を分解し、ユニクリーナー液を垂らして綿棒でふき取ると真っ黒になってしまった。 ブラシの折損などの異常は認められなかったので再組付けして、軸受部に外からオイルを一滴たらして再測定を実施したのが、下のグラフである。 電流値はグーと下がって滑らかに回っていた。 ブラシ部のクリーニングの効果は今までも経験しているが、その効果が持続しないのも知っている。

 とは言っても、この状態で負荷を掛けた状態のトルク特性を測定した。 モータの端子電圧をパラメータにし、かつ、電圧一定の条件を保持するようにして測定した。 この電圧保持は厳密には行かないので、±0.1volt 以内に収まるようにしている。 データ群としては、 3、4、5、6Volt の4種類の状態を測定した。 測定データを下に示す。

 データ数はさほど多くはないが、かなり綺麗にそろったデータが得られたが、これもクリーニングの効果かも知れない。  それにしても、ブラシ部の汚れはこんなに影響するもんかと驚いている。

 

■04 モータ特性のモデル化 

 モータ特性の計算モデルは、モータの端子電圧と電流値から、その時のモータの回転数と出力として発揮しているトルクを計算で推定しようとするものである。 その解析方法は、「モータ特性のモデル化」にて報告した方法による。

  

1) 電圧系定数の推定

 

 まず、外部電圧、電流、回転数のデータより、Ke 、Ra 、Eb の定数を推定する。 その結果、

 

 となり、定数の推定値は、 Ra = 9、Ke = 0.000255、Eb = 0.298 となった。

 

2)トルク系定数の推定

 

 

 同様に、回転数 Nm 、電流 I 、出力トルクTm’のデータより、Kt 、Rm 、λm の定数を推定する。

 

 となり、定数の推定値は、 Kt = 248、Rm = 15.585、λm = 0.0003944 となった。 さらに、他の特性値でも測定値と計算値がマッチング状態を見ておく必要があろう。

3) 無負荷特性とモータ特性のマッチング具合

 実測データのグラフの上に、推定した定数を用いて計算したデータを赤線で示す。 

 実測値と計算値は良く合致しており、モータのモデルとしては充分に活用出来ると言える。 クリーニング状態が保持出来ればの話であるが・・・・・・・・。