HOME >> 動力車の調査 > KATO EF81-81 その1 その2
モータ単品での調査に引き続き、車両特性の調査を実施し、伝達系の効率を求める。
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■05 電気回路の電圧降下
電気回路の電圧降下について、いままでそれらしく調査したが、結局は活用出来るデータは得られなかった。 接触抵抗の不安定さが原因と思われる。 そこで、適切な測定方法が見つかるまではこの電圧降下の調査を中止することにした。 その代わりに車両特性の計算の中で、適切 に推定することにする。
■06 車両での速度特性と牽引力特性の調査
車両状態での速度特性と牽引力特性を測定する。 まず、車両単機での平坦路走行特性を下のグラフに示す。
次に、負荷状態での動力特性を下に示す。 3 Volt では、走行が不安定であったので、4 Volt から始めている。
パラメータとしての電圧は、厳密には表示通りではないので、今後の測定では面倒でも改良した方がよさそうである。 また、先回のEF81-119では、7voltでの電流が外れていたが、このEF81-81 では異常なさそうである。 そして、このグラフより、粘着限界での牽引力は、およそ30グラムであることも読み取れる。
■07 車両特性計算への挑戦
モータのモデル化には目途が付きつつので、今度も車両特性を考えて見ることにした。 計算式は、モータの端子電圧とモータに流れる電流値より、モータの回転数と出力トルクを求め、ギヤ比と動輪径より、車速と牽引力を求めるものである。
モータに流れる電流は、供給された電流からライト基板に流れる電流を差引いて推定する。 また、電圧降下量は計算途中で検証しながら仮定値を入れている。
上記の測定データを整理し、今まで求めてきた計算式をもとにしてEXCEL 上で車速と牽引力を計算するシートを作成し、計算結果をグラフの一覧表にして、測定値と計算値の合致具合を見て行くことにした。 モータの変数は、前の章で求めた定数を使用し、同じ式を使用して計算している。
1) 単機走行時の特性
伝達効率が100%と仮定した場合に車速を実測値と比較したものが、下の左のグラフである。 モータの回転と車速の関係は、伝達効率に関係なく厳密に1:1であるはずである。 この違いは、車輪のスリップとも考えれれるが無負荷走行の場合では考え難い。 その原因として、駆動系の摩擦抵抗と電気系の電圧降下が考えられる。 そこでまず、駆動系の摩擦抵抗については、実測された電流値からモータモデルによりモータの出力トルクを計算し、その値を伝達系の損失トルクと考えてグラフ化したので下の右のグラフである。
この損失トルクのグラフを見ていると、データのバラツキは大きいが、エイヤーとみれば回転に応じて比例的に増加している部分もあるようである。 また、先回のEF81-119車にマイナス側でなく、わずかにプラスとなっている。 この損失トルクの近似直線の式を使って、車速と電流値を計算ししたものが下のグラフである。
このグラフの計算の時には電圧降下量も見込んで計算している。 今までの例を参考にしていろいろ数値を入れて見ながら、上のグラフの計算値と実測値がマッチングするように探っていった。 さらに、下に示す「モータと車体の速度差」も見ながら、理屈的にかけ離れた数値にならないように制約も付けて行った。 しかし、このグラフに示す程度にまでしか、合わせることが出来なかった。
2) 牽引力特性
次に、牽引力特性についても、効率100%の計算結果をグラフ化した。
この効率100%計算結果を元に、伝達系の効率と速度差を下のグラフに示す。
伝達効率は、主に電流値からトルク関係を計算しているので、やや信用しても良いだろうと思っている。 やはり効率は20%前後である。 スリップ状態を見たい速度差のグラフは、相変わらず信用できないグラフとなっている。
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3)駆動系の損失とは
伝達系の効率が低いのは何故なのか、さらに突っ込んで解析することにした。 この解析グラフのEF81-119 と同じ方法で作成しているので、その考え方はそちらを見て欲しい。
まず、損失トルク T1 と T2 を計算したデータが、下のグラフである。
つぎに、 抗力項の係数を求めるために作成したグラフを下の左に示す。 そして、T2のトルクから、この抗力項をさし引いた残りの損失を、下の右のグラフに示す。
この抗力項の係数は、駆動側で、0.149 、制動側で、 -0.158 と計算された。
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これらの解析結果について、グラフからではいまいちピンと来ないので、先回と同様に、グラフの表示方法を工夫してみた。
モータから作用したトルクが有効に動輪まで達した有効トルクと、それに抗力項をプラスしたもの、および、モータトルクを重ねてグラフ化したものを、電圧パラメータ毎に作成した。 各線図に囲まれた部分が、有効トルク分、抗力項、残り分を示すことになる。
こうして見ると、モータの出力トルクの多くは、やはり抗力項に消えていることが分かる。 また、電圧によっても損失内容の変化は無さそうである。
4)牽引力特性の計算結果
伝達系の損失量が計算出来ることが分かったので、モータのモデルと合わせて、車両の動力特性が計算できるはずである。 そこで今までの各種定数や損失データをもとに、牽引力特性を計算してみた。 その計算結果を紹介する。 電圧をパラメータにし、牽引力を設定して車速と電流値を計算し、測定データのグラフの上に重ねて表示したものを下に示す。
今回の計算では、ライト基板への電流バイパスも計算に含めている。 実測データと計算値とが概ね合致しているが、まだまだと判断する。
■08 まとめ
この車両の動力特性に関する諸元をまとめて一覧表に表示する。
EF81形 交流直流電気機関車 | メーカー/品番 | KATO/3021-1 | 車両番号 | EF81-81 | 製造年(再生産) | 1997年 | ||
車体諸元 | 車両重量 | 101.2 | 前台車荷重 | 45 | 後台車荷重 | 45 | ||
台車中心間距離 | 78 | 台車軸距離 | 17.5 | |||||
モータ諸元 定数 | モータ構造 | 2P5S、θ=0 | フライホイール諸元 | φ10.4*7.5-2 | マーキング | 狭い白 | ||
逆起電力定数 Ke | 0.000255 | 巻線抵抗 Ra | 9 | ブラシ部電圧降下 Eb | 0.298 | |||
トルク定数 Kt | 248 | 摩擦トルク Rm | 15.585 | 摩擦損失速度係数 λm | 0.0003944 | |||
伝達機構 | ウォームモジュール m | 0.4 | ホイール歯数 Z | 19 | 動輪軸歯数 Z | 17 | ||
ギヤ比 i | 19.0 | 動輪直径 D | φ7.4 | 車輪形状 | 通常形状 | |||
各種定数 | 電圧降下係数 R5 | 0.0085 | 電圧降下係数 R6 | 0.4 | ライト基盤係数 R3 | 3.78 | ライト基盤係数 R4 | 6.99 |
速度係数λd | 0.000006 | 抗力係数駆動 R7 | 0.149 | 抗力係数制動 R7 | -0.158 | 固定項係数 R8 | 3.35 | |
基本単位 | 長さ mm、 重さ gf(グラム )、 回転数 rpm、 電圧 volt、 電流 A、 抵抗 Ω、 スケール速度 Km/h、 ただしグラフの電流値は mA で表示。 |
(注記) これらのデータは、ホビーとして個人が手持ちの車両を測定したものであり、その信頼性は保証いたしません。
動力車の調査も第6報となると、その解析手法も整理出来つつある。 今回は、KATOの新世代を築いた新しい動力機構に注目し、最初のモデルのEF81(1989年発売
品
)とそのマイナーチェンジ品(1997年発売品)の調査を同時に進めた。 しかし、中古品であるがためにモータの作動が不安定であることに手こずってしまった。 中古品のせいなのか、あるいは古い設計の製品のためなのかは分からないが、不安定なモータ特性をもとに車両特性を計算しているので、計算結果の信憑性には、自信が無い。
また、解析手法も整理出来つつあるので、今までのEF66-51やEF64-1032の調査結果を再整理し、この動力機構の比較を行ってみたい。