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鉄道模型工学概論 円盤式傾斜台を使用した測定方法 その2

§4 測定装置の製作

§4.1 重心位置αを計測する仕掛け

 まず、重心位置αを計測する仕掛けを説明する。 当初のイメージ図では円盤の外側に目盛りを設定する構造を想定していたが、より簡単な構成とすることにした。

 この装置では、回転円盤の中心を支える中心軸は、M10 のボルトが台に固定されて立ててある。 (動力特性の理論と測定/定置実験装置の製作を参照下さい)。 その上部のM10 のネジ部は途中までしか切ってないので、その部分を活用することにした。 あり合わせの厚さ2mmのプラ板にφ9mmの穴をあけ、M10 のネジ部に強引にねじ込み、そのネジ部の端までネジ込んだ状態が下の右の写真である。 これ以上はネジが切って無いのでネジ込むことが出来ない。 この状態では、円盤は回転するものの、ネジ込んだプラ板はボルトに固着しているので固定されたままである。

 次に、分度器をスキャナで取り込み、A4いっぱいまで拡大印刷する。 これを厚さ1mmのプラ板に貼り付け目盛り板を作成した。 その中心に穴をあけ、上記のボルトに差し込みネジで締め付けて固定した。 下の左の写真。 これによって目盛り板は台に固定されたことになる。 

 つぎに、下の右の写真に示すように、以前工作したものを再利用して指針を作成した。 

 指針の先端部は長さが足りなかったので少し延長してある。 また、根元部はM10 のボルトを中心に回転出来、かつ指針を保持出来るように、パイプやら針金やらを組合せ、格好は悪いが充分機能する構造とする事が出来た。

 指針の中間部には、上の左の写真のように、角度目盛りに対応するように爪を設け、角度を読み取る事が出来る。 指針と目盛り板の全体を右の写真に示す。 円盤は駆動装置で回転させる事が出来るものの、目盛り板は台と固定され、指針は手で回すことが出来るが、勝手には回転しない構成となっている。

 

§4.2 車両の重心位置を測定する道具

 次に、車両の重心位置を測定する道具を作成した。 TOMIXの単線トラスト鉄橋(3030)とφ1.5mm の真鍮棒を使用して、適当な木材を組み合わせて揺動するする線路付き籠を作った。 鉄橋の上部の梁にヤスリで少し切り込むを作り、そこで水平に固定された真鍮棒が支えるようにしている。 籠自体のバランスは下の左の写真のごとくチェックして、問題無いことを確認した。 車両は、右の写真のように、リレーラを使って線路に入線させている。

 左の写真は、前寄りに乗せたため、前に傾いて状態であり、位置をずらして鉄橋が水平になる位置に車両を手で移動させる。 車両側の目印は、1mm 幅のマスキングシートを使用し、車両の天井と側面にかけて張り付けることにした。

 

§4.3 重り用の車両の製作

 車両自身の重量と円盤の勾配だけで、車両の牽引力を測定するには、粘着係数μとの関係で30度以上の勾配が必要となる。 この状態での測定は無理があるので、負荷用の車両を連結することにした。

 鉄コレのシャシーの上に水草の重りをペタペタと貼り付け、セロテープでぐるぐる巻きにしている。 重量は 101.2グラムとなった。 注意すべき点は、重心を低くする事である。 最初はM10クラスのボルトやナットを括りつけていたが傾斜面を走行中に外に倒れてしまった。 そこで、低重心を考慮して水草の重りを使用したのである。

 この車両の重心位置も測定し、マジックで印を付けている。上の右側の写真には、動力車との連結状態を示す。 そして、走行前に、動力車の重心位置と重り車両の重心位置のなす角度を測定し、重り車両による負荷を計算する時に使用する。

 100グラムもある重さなので、その走行抵抗も考慮する必要があり、その測定を実施した。 その方法は、「鉄道模型工学/抵抗挿入による特性の改善」での減速部と車輪の走行抵抗で実施した方法と同じである。 でも、そのバラツキに再び戸惑った。今回の状態は、単純な台車なので、車両側の要因とは考えられない。 良く見ていると線路の継ぎ目で小さなショックがあり、継ぎ目部分をペーパーで磨くもその効果は無かった。 もともと走行抵抗の小さい鉄道模型では、小さなショックでもその影響が大きいことが伺える。 継ぎ目の無いロングレールが必要なのか。

 速度ゼロの時の抵抗は傾斜法で測定したもので、この値は信頼出来ると思う。 そこで、継ぎ目などのショックで飛び出すのは瞬間的であると想定し、低い位置での値が正しいのだろうと勝手に決め付け、重り車両の走行抵抗を、 2.0 グラムと言う事にして、あとは測定誤差とする事にした。 なんと大雑把なことか。

 

§4.4 測定台の傾斜装置

 次に、回転円盤を傾斜させる方法を説明する。 当初は下の写真に示すように、台の右側端部に角材の木片を差し込んで傾斜させていた。

 さらに傾斜角を調整するため、ミニジャッキを細工して台の端部に取り付け、ネジで調整するようにした。 また、傾斜角を測定するため、台の端部のリフト量を測定する目盛り用物差しも作った。

 ← 測定装置の全景

 しかし、台の剛性が不足しているため、ミニジャッキでのリフトでは台の右側がねじれてしまう。 左端部の2点とミニジャッキ部での3点支持は合理的であるが、剛性不足ではその効果は半減してしまう。 そこで、最初の様に、角材木片を前後に差し込むように変更した。 せっかく取り付けたミニジャッキなどは取り外してしまう。 そして、寸法の異なる角材を色々用意し、小箱に入れて用意しておくことにした。 それぞれの角材には、あらかじめ測定している寸法を記入してあり、それらを組合わせて所定のリフトを設定する。 下の左の写真。

 また、測定データをその場で確認するため、古いノートパソコンを持ち出して来て用意した。 計測されたデータを直接パソコンに打ち込み、グラフ化して確認するば、特性の傾向が判明すると共に、次の測定点を決める判断が容易となり、疑問のあるデータなどはその場で再確認出来るようになった。