HOME >> 鉄道模型実験室 > モータ特性を測定しよう その11 コアレスモータ
■ はじめに
先回 「 モータ特性を測定しよう その10 ボールベアリングを使う 」 にて報告したように、本命としていたボールベアリングを使った測定装置が上々でしたので、いよいよ目的のコアレスモータの測定にチャレンジした。
.
■ コアレスモータのセット方法
測定対象のモータを KATO の C56 から取り出して測定器にセットすることにし、まず、C56 の分解から始めた。 モータを取り出すには、右の写真の様にほとんど分解してしまう必要があった。 以前にも調査のため分解組付けを実施しているが、モデルによって分解手順が異なるので、おっかなビックリで分解して行った。 右の写真参照。 無事に再組立が出来るか心配である?
さて、取り出したモータであるが、どうやって測定台にセットするかも、工夫が必要である。 まず回転センサのためのマーキングが必要であるが、「モータ特性を測定しよう その3 トルク測定部」で作成した小さなプーリーを使って外周に白黒のマーキングを実施して回転体とした。
このプーリーは、タミヤの楽しい工作シリーズNo.141のプリー(L)セットの部品で、外径が11oのものである。 このプーリーの溝は紙粘土で埋めた有るが、乾燥後にペーパーで滑らかに仕上げて白黒のペイントを塗っている。 また、このプーリーは軸径が数種類あるブッシュを用いて軸にはめ込むのであるが、φ2mm 軸用のブッシュに 2.5mm のドリルを使って内径を拡大し、コアレスモータのカップリング部分にはめ込む様にした。
負荷装置と連結させるジョイントは、内径2mm のゴムチューブを使って押し込むようにして連結させた。 下の写真を参照。 回転軸の芯ずれを防止するための首振りは充分ではないが、長いジョイントを使うことで芯ずれの影響を少なくしようと配慮している。
一方、掴みどころのないコアレスモータの固定については、モータ本体への変形を避けるために、セロテープを使って何枚かのプラ板に固定した。 そして、モータ台にはそのプラ板を掴んで固定するようにし、モータ本体へは無理な力が掛から無いようにした。 さらに、電極は細い配線がハンダ付けされているものの、すぐにも取れそうなのでこれもセロテープで固定するようにした。 回転センサーなども取り付けたモータ台を下右に示す。 セロテープだらけである。
そして、測定台にセットした状態を下に示す。
モータ軸などの軸芯合わせは、目に頼ってセットしたが、目視による判断は意外と正確であると確信している。
また、開放形のボールベアリングを使用しているので埃防止のために、気休めとは思いながらも紙で覆いを作った。
また、スイング軸のアンバランスと拡大レバーのアンバランス、および荷重計の弾力を使って糸を張った状態で使用しているが、不使用の場合には荷重計に力が掛かった状態となるため、上左の写真のように、ブレーキ箱を一回転させてレバーを跳ね上げた状態にしている。 使用する時は、上右の写真のようにブレーキ箱の回転を元に戻して使用する。
なお、この測定装置の制約で、モータの回転方向はモータに向かって反時計方向に回転させている。
.
■ C56-144 号機
モデルの品番 | 2020-1 |
モデルの品名 | KATO C56 小海線 |
発売時期 | 2012年 |
入手時期 | 2012年 新品購入 |
分解調査等 | C56 144 |
動力車の調査 | 未実施 |
滑らかの低速走行と共に、きわめて小さい消費電流も特徴である画期的な小型蒸気機関車のモデルである。
そのモータ単体での性能特性を下に示す。
モータは 0.5 ボルト近くから回転を始めており、回転数と電圧は一直線である。 電流値はやや右上にそり上がった傾向があるが、抵抗は速度の2乗に比例するといる流体力学の原則に沿った現象ではないかと思われる。 また4ボルトを過ぎたあたりで電流値がぴょこんと飛び上がっているが、これに合わせてモータの音が大きくなり共振現象の影響ではないかと思っている。 この 8,500rpm 近辺以外では静かでおとなしいのに、突然騒ぎ出すのである。 モータ自身なのか、取り付けたプーリー類のアンバランスなのかを判定しておけばよかったのに・・・・・・と反省している。
トルク特性については、6ボルトでは安定しているのに、なぜだか低い電圧ではかなり乱れていた。 原因不明なり。
.
■ C56-149 号機
モデルの品番 | 2020-1 |
モデルの品名 | KATO C56 小海線 |
発売時期 | 2012年 |
入手時期 | 2012年 新品購入 |
分解調査等 | C56 149 |
動力車の調査 | 未実施 |
このモデルは、珍しく複数台を入手しているので、同様に測定を実施した。
回転数特性は、C56-144 号機と同じであるが、4ボルトを過ぎたあたりの共振点(?)は表れす、非常に綺麗に揃ったデータを示している。 共振現象はやはり個体差なのであろうか。
トルク特性についても、優等生のようなデータを示している。 電流とトルクの関係についてもすべて直線上に乗っているのは理想的な状態ではないか! これは回転抵抗などの余分な邪魔者が非常に小さい、品質の高いモータと言えよう。
.
■ C59-123 号機
モデルの品番 | 2026-1 |
モデルの品名 | KATO C59 戦後形(呉線) |
発売時期 | 2015年 |
入手時期 | 2015年 新品購入 |
分解調査等 | C59-123 号機 |
動力車の調査 | 未実施 |
このモデルは、自分の手持ちの中では比較的新しいモデルであり、そのコアレスモータを取り出した。
C56-149 号機と同じ様子であるが、電流値がやや乱れているのは何故だろうか。 測定ミスの可能性も捨てきれないのであるが・・・・・・・。
トルク特性についても、C56-149 号機と同じ様子であり、その値もほとんど合致している。 モータの製造品質が安定している事を示しているようであるが、N 数が少ないので何とも言えないのである。
■ まとめ
念願のコアレスモータの特性をバッチリと測定することが出来た。 そしてその製造品質の高さも予感することが出来た。 さらに、我がホビーでの測定技術もまんざらではないかと自負している。
今後は、さらにN 増しと共に、色々なタイプのモータについても触れてみよう。 例えばB トレ用のモータとか・・・・・・・・。
2016/11/10 作成