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鉄道模型工学  KATOのコアレスモータのデーをタ整理

■ いきさつ

 動力特性の解析を実施す作業を5年半ぶりに再開している。 先回はモータ回転数を使ってのスリップ率データを整理したが、今回は蒸気機関車用モータの本命と目されるKATO製コアレスモータについて整理し、このモータの平均的特性値を求めて、モデルの定数として活用することにする。

  

 

■ KATO製コアレスモータ

 KATO Nゲージ生誕50周年記念誌によると、1969年に開発されたFM-5 から、2010年に開発されたコアレスモータまで40年間にわたってモータの小型化に取り組んできた最新技術の結晶であるとのこと。

 蒸気機関車のボイラ内へ収納できる小型化と、必要な牽引力を発揮できるパワーを備えたモータとして開発されている。 本体はφ7.0mm の丸型で長さは20mm である。

 このカレスモータの性能については「モータ特性を測定しよう その11 コアレスモータ」で測定し、他のモデルについても同様に実施した。 そして、「モータ特性のモデル化 改良版」に示した解析法を使って、トルク定数とか逆起電力定数などのモータ特性を表す必要な定数を推定して来た。 その結果を「モータの特性解析 まとめ 追加版2」にて、他のモータの解析結果を含めて一覧表にしている。

 この一覧表の中から、KATO製コアレスモータの部分を取り出して下に再掲載する。

搭載モデル トルク定数 Kt 軸摩擦トルク Rm 軸損失速度係数 λm 巻線抵抗 Ra 逆起電力定数 Ke ブラシ部電圧降下 Eb
gf-mm/A gf-mm gf-mm/rpm Ω volt/rpm volt
C59-123 457.6 0.89 0.00006675 38.1 0.0004757 -0.029
C56-149 475.3 0.91 0.00008101 39.2 0.0004840 -0.005
C56-144 497.3 ( -0.23 ) ( 0.00013470 ) 41.3 0.0004913 0.038
C57-195 473.4 0.99 0.00006590 38.2 0.0004876 -0.009
C62-2B 455.0 1.29 0.00009215 39.6 0.0004800 0.011
D51-498A 476.6 0.85 0.00009210 38.7 0.0005084 -0.019
平均値 472.5 0.99 0.0000796 39.2 0.0004878 0.0
標準偏差
14.0 0.16 0.0000116 1.1 0.00001047 --- 
標準偏差/平均値 2.95 % 16.3 % 14.5 % 2.75 % 2.15 % --- 

 表中に黄色で示した C56-144 号機の一部の項目は、測定データに疑問があったので、平均や標準偏差の計算から除外している。 また、ブラシ部電圧降下の平均値は、-0.002 であったが、電圧降下がマイナスになる事はあり得ないので、平均値はゼロと解釈した。

 各定数についてグラフでも示しておこう。

 この平均値をKATO製コアレスモータの標準定数とすることにしよう。

KATO製コアレスモータの標準定数
Kt Rm λm Ra Ke Eb
 gf-mm/A   gf-mm   gf-mm/rpm   Ω   volt/rpm   volt 
472.5
0.99
0.0000796
39.2
0.0004878
0.0

 そして、この定数を使って計算した特性値を測定データと比較してみる。 対象はC59-123号機とした。 測定値データと推定したモータ定数での計算値は、上記のC59-123 のページを参照してください。 標準定数を使った計算データでのグラフを下に示す。 赤線は計算値を示す。

 測定データから直接求めた定数での計算結果の方が、実際の測定データによりマッチしているのは当然かもしれない。 標準定数を使用するとどうしてもスレが生じてしまうのは仕方がない事である。 しかし、KATO製のコアレスモータは、上のグラフや標準偏差値から判断して、その品質が安定していると思われる。 このため、モデル毎にモータを取り出して、モータ単体での特性を測定しなくてもこの標準定数を使用すれば、計算上から容易に推定出来る事に注目したい。

 特に電流値からモータトルクを推定出来ることは、車両特性を解析する上で非常に有効な手段なのである。 なぜなら、モータの回転数は直接測定できるので計算によって推測する必要がないのだ。 電流値からモータトルクが推定できる事は、そのメリットは遥かに大きいのである。

 なお、コアレスモータの無負荷時のデータを見ていると、どのデータも電流特性が少し弓なりになっているのが気がかりである。 これは無負荷時の電流、即ち空転時のモータ損失トルクが速度の2乗に比例している項目があるのではないかと疑っている。 でも、まだ直線近似で対応できる範囲であると判断している。

 

■ 余談: “5極モータ” と “2極5スロット”

 「KATO Nゲージ生誕50周年記念誌」を読んでいて、あれー?と思った。 102ページの用語解説の中に、モーターの極数は “モーターの中にできる磁極の数で、コイルが巻かれている溝の数に対応する。” と記述されている。 自分が参考にした赤津先生の著作本では、溝の数はスロット数で表し、極数は外側の磁石の極数を示すと説明したあった。 このため、KATOのGM-5 モータの場合は、“5極モータ” ではなくて “2極5スロット” モータと呼ぶべきかなと思っていたのだ。

 ネットなどの他の資料では、極数というのはモータの固定子に作られる「磁極(N極, S極)の数」を表し、磁極は必ずN極とS極の2つで1対(1組)となる仕組みと説明されてあり、自分では偶数で表記されるものと理解していた。 このため奇数の極数はないはずなのだ・・・・・・・・・と思っていたのだ。

 この分野では、用語が統一されておらず、長い歴史の中で、それぞれの派閥争いがあるのではと想像する。