HOME >> マイコレクション > KATO 製蒸気機関車の動力機構一覧
マイクロエース製の蒸気機関車シリーズに続き、KATO 製蒸気機関車シリーズについて、手持ちの車両の動力部の構成を一覧表にまとめてみた。 その中から、設計陣の考え方が汲み取れないかと、大それた考えでチャレンジしたものである。
■ KATOの蒸気機関車のシリーズ
初めに、ホームページなどの資料をもとに、発売されたモデルを一覧表にまとめた。
● このリストは、新規に発売された形式をグループとしてまとめている。 例えば、最初はC50型が発売され、その後、C11型、C62型、D 51型と拡大しているのが判る。 そして、そのグループ内では、同一モデルの改良や再生産と共に、車種展開もはかられているが、マイクロエースの様な怒涛のような展開は実施されていない。 この辺は商品戦略の違いが見てとれる。
● KATOでは、発売順に品番を振っているように見えるが、ボイラ内にモータを納めた次世代型動力ユニットを使用したモデルでは、品番と発売順が一致していない。 品番が2019-2のC62東海型が2007年に発売されたのに、2016のD 51が2010年にやっと発売されているのである。 また、品番が2019や2020の車種は既に発売されているのに、2018の車種はまだ発売されていない。 欠番なのだろうか。 このような状態は何を意味するのだろうか? その疑問に対する私の個人的な推測を「C62 2 B 北海道形」の分解調査の中で述べてみたが、皆さんのお考えはどうでしょうか?
● このリストをもとに、手持ち車両を分解し、その構造を調査したのでまとめてみよう。
■ 構造的な特徴
実施した内容は、動力部の構成について構造的な特徴を整理しものである。 構造部のイラストは、各車両の分解調査のページから抜き出したものであり、ほぼ同じスケール( 1mm = 6 pixel )で表示している。
そして特徴欄に、動輪の駆動方法の違をチェックした。 この動輪の駆動方法については、ギヤ連結とロッド連結の方式が有るが、その記号は、
G: ギヤ連結 R: ロッド連結 r: ロッド連結であるが、穴とピンのガタが大きいもの T: トラクションタイヤを履いている動輪
を示している。
マイクロエースの場合は発売時期順に表示したが、今回はタイプ別にまとめて整理してみた。 また、生産年は、そのモデルが初めて発表された時期では無く、調査した車両の発売年、あるいは再生産年を示している。
車両番号 品番 |
生産年 |
動力部の構成 | 特徴 |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
第1 |
第2 |
第3 |
第4 |
m |
i |
|||
モータを前方に詰込んだタイプ |
||||||||
202 |
1978年 | R |
Gr |
GRT |
0.3 | 28.0 | ||
●エンジン部の長さが短いため、モータを第3動輪の上まで挿入している。 ●減速機構は、ウォームとホイールギャ、アイドラギャ、および動輪のギャの4点で構成され、至ってシンプルな構造である。 ●モータは、左右のフレームの小さな溝とモータ端部の押さえで保持するのであるが、その保持力は弱く、心配になるほどである。 ●第2動輪のロッドピンは、大きなガタが設定されている。 ●フレームには刻印がない。 |
||||||||
2001 |
1981年 | R |
Gr |
GRT |
0.3 | 28.0 | ||
●エンジン部の長さが短いため、モータを第3動輪の上まで挿入している。 ●減速機構は、ウォームとホイールギャ、アイドラギャ、および動輪のギャの4点で構成され、至ってシンプルな構造である。 ●モータは、左右のフレームの小さな溝とモータ端部の押さえで保持するのであるが、その保持力は弱く、心配になるほどである。 ●第2動輪のロッドピンは、大きなガタが設定されている。 ●フレームには刻印がない。 |
||||||||
2001-1 |
2005年 | R |
Gr |
GRT |
0.3 | 28.0 | ||
●C50の改良で、主要寸法は同じ。 ●モータの保持方法は従来のままである。 ●フレームは新規に作成されている。フレームには、2002R/Lの刻印あり。 第1動輪と第2動輪の間の不要なピンも無くなっている。 |
||||||||
2002 |
2007年 | R |
Gr |
GRT |
0.3 | 28.0 | ||
●動力ユニットの基本部分はC50型と同じであるが、追加構成する部品を色々替えて、テンダー型とタンク型のSLに仕上げている。 共通化設計のお手本のようである。 | ||||||||
モータを後方に張り出したタイプ |
||||||||
206 |
1977年 | Gr |
G |
Gr |
GrT |
0.3 | 33.2 | |
●各動輪はギヤ連結されている。 ロッド類はプラスチック製である。 第2動輪はロッドピンが無いため、ギヤ連結のみになっている。 ● サイドロッドのピン穴はガタの大きな連結となっており、ギヤ駆動との干渉を防止している。 ●第4動輪にトラクションゴムを履かせている。 ●モータ軸は長く、モータの保持方法も不安定な気がする。 |
||||||||
2010 |
1991年 | R |
Gr |
GRT |
0.4 | 26.8 | ||
●ウォームは左右を軸受で保持されており、モータ軸とはカップリングで連結されている。 ●ウォームギャは、ホイールと小ギヤの2段構造となっている。 ●ギヤのモジュールは、0.4を採用。 ●動輪ギヤと噛合うギヤの位置が上方に移動している。 |
||||||||
2011 |
1997年 | R |
Gr |
GRT |
0.4 | 27.8 | ||
●C58と同じ構造である。 ●フレームの刻印はC57初代の品番である2007である。 このため、C57と共通使用して可能性がある。 |
||||||||
2013 |
2006年 | R |
Gr |
GRT |
0.4 | 27.8 | ||
●C55型と、形状や寸法が同じであり、共通使用しているように思われる。 |
||||||||
2006-1 |
2007年 このモデルは1970年代から生産されている。 |
R |
G |
Gr |
GRT |
0.3 | 33.2 | |
●第1動輪は第4動輪からロッド連結されている。 第2動輪はロッドピンが無いため、ギヤ連結のみになっている。 ●第3動輪のロッドピンは、大きなガタが設定されている。 ●第4動輪にトラクションゴムを履かせている。 ●第1動輪と第2動輪の間には昔のアイドラギヤ用軸ピンが残っている。 ●モータ軸は長く、モータの保持方法も不安定な気がする。 |
||||||||
ボイラ内にモータを配置したタイプ |
||||||||
2015 |
2002年 | R |
G |
GrT |
R |
0.3 | 26.1 | |
●ボイラ内にモータを納めた次世代型動力ユニットの第1弾。 ●モータはカンモータを採用し、従来のものより小型化している。 また、フライホイールを始めて採用している。 ●ロッド構成はD51と同じであるが、ギャ連結は第2と第3動輪のみ。 ●トラクションタイヤは第3動輪に履かせている。 ●左右のフレームはネジで固定するのではなくてピン結合のみである。 |
||||||||
2019-2 |
2007年 | R |
R |
GRT |
0.25 | 30.0 | ||
●次世代型動力ユニットの第2弾。 ●モータは9600のカンモータから、通常のマグネットモータに戻っているが、電車用の小型モータを流用しているとか。ジョイントなども電車式なり。 ●歯車のモジュールが0.25と小さくなっている。 ●フレームの造形が細かくなっている。 ●分割式のサイドロッドが採用される。 |
||||||||
2016-1 |
2010年 | R |
R |
GRT |
R |
0.3 | 30.0 | |
●次世代型動力ユニットの第3弾。 ●小型のコアレスモータを採用する。 ●フライホィールを増やし、走行性能をアップさせている。 ●分割式のサイドロッドを採用し、かつ、第2と第4動輪は板バネで支持する方式を取っている。 これによって、第2と第4動輪は、わずかであるが軽く上下に動くことが出来る。 実機のイコライザーを模した機構である。 |
||||||||
2017-2 |
2011年 | R |
R |
GRT |
0.3 | 30.0 | ||
●次世代型動力ユニットの第4弾。 ●小型のコアレスモータを採用するが、その配置は、D51とは前後が逆になっている。 ●駆動系構成部品は、D51型と共通使用さているが、ウォームのねじれ角が左ネジになっている。 ●分割式のサイドロッドを採用し、第1動輪は板バネで支持する。 屁理屈的には、車体の水平を確保するために第2動輪をフリーにすべきと思うのだか・・・。 |
||||||||
2020-1 |
2012年 | R |
R |
GRT |
0.25 /0.3 |
30.3 | ||
●次世代型動力ユニットの第5弾。 動力ユニットの小型化を達成し、モデルの1/150縮尺を実現している。 ●小型のコアレスモータを採用するが、その配置は、C62とは前後が逆のD51型である。 ●駆動系構成部品は、新たに新設されており、ウォームは2条の左ネジである。 ●分割式のサイドロッドを採用し、第1動輪は板バネで支持する。 屁理屈的には、車体の水平を確保するために第2動輪をフリーにすべきと思うのだか構造上無理なのかな。 |
■ まとめ
● KATOの蒸気機関車シリーズは、マイクロエースのように多種多量の形式に展開はしていないが、何度も再生産されている。 小生の所有している車両は、わずかに9種の15台のみであるが、年代の新しい再生産品の構造を見ると、古い年代の製品との差が少ないように思われる。 これは、早い時期に完成度を高めていたため、製品改良はあまりされていなかったのではないかと推察する。
● しかし、マイクロエースと言うライバルメーカが出現してからは、様子が異なって来ている。 ボイラ内にモータを内蔵する次世代型と呼ぶべき新しい動力ユニットの開発に力を注いだようであり、開発されたモデル毎に、新しいアイディアと工夫を積極的に取り入れて、ライバルメーカとの差別化を実現している。
● この次世代型動力ユニットは第5弾まで発売されたが、新しいモデル毎に構造を変えており、どのモデルからどんなアイディアが取り入れられたのかを見て行くと、技術陣の奮戦する様子が浮かんでくる。 マイクロエースの「動力改良」の内容とは、汗の量が格段に違う様に思われる。 これは技術力の差なのか、経営方針の差なのだろうか。
● 次のモデルはどのような車種を取り上げるのだろうか? 伝統のあるC11やC57などを当然ターゲットにしていると思われるし、8620やC12などの小型車を狙っているのかも知れない。 でも当方は軍資金が底を付いているので指をくわえているだけになりそうである。 TOMIXのC61も見送ってしまったのである・・・・・・・・・・・。
● マイクロエースやKATOの蒸気機関車を分解して、しげしげと部品を眺める事によって、その構造を把握する事が出来た。 そしてSLの分解・組付けも上手になり、メンテナンスも安心して実施出来るようになった。 これは、一つの成果と言えよう。