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鉄道模型調査室  TOMIXの2004年モデル動力車の不具合

■ いきさつ

 新幹線車両の室内灯整備と分解調査を実施している中で、思わぬトラブルに遭遇した。 それは、「東北道新幹線 E2系 はやて/あさま」(2022/3/8)の分解調査後のテスト走行で発生しました。 動力車がギクシャクとした走り大きな音がするのです。 ウォームギヤ部が原因と推察していろいろ調べましたが、原因がよく分かりませんでした。 そして、マイコレクションの「電車・気動車類 リスト」の充実を兼ねて、他の編成も調査して結果、TOMIX の2003年から2004年頃の製品について、同様な問題を抱えている事が分かりました。

 これらの調査と合わせて、対策を考えることにしました。

 

■ 問題の現象

 動力車を走行させると、ビックリ/シャックリの走行状態大きな音を発生する。 とても走行を楽しむ物ではありませんでした。 分解してみたのですが、原因がよく分かりませんでした。 ただ、元機械技術者の小生にとっては、疑問のある動力部の構造だったので、疑いをもって他の車両を調査しました。 その結果、やはり機構的な欠陥がこの問題を発生せているとの結論に達しました。

 

■ 構造上の疑問点

 さて、問題のウォーム部の構造を見てみましょう。 シャシーにはめこまれたウォーム部の状態を下左に、そのウォーム部を取り出して分解した状態を下右に示します。

 疑問に思ったのはウォームシャフトのスラスト軸受けが無い事です。

 ウォームの先端は、歯を切ったままの端部であり、ここでスラスト力を受けるようです。 いや、ウォーム軸のフランジ部分で受けるのかも知れません。 どちらもピッタリの寸法でしたので、どちらが先に接触するのかは分かりませんでした。

 一方、反対側のモータ側に掛るスラスト力は、受ける所がありません。 ウォーム軸が保持部からスポット抜けてしまうのです。 このスラスト力はどこで受けるのでしょうか疑問です? ジョイントの頭の部分を介してモータ軸で受け止めるしかありません。 変な構成ですね。 設計者は、ウォームギヤの構成と作用を理解していないものと推察します。

 動輪の駆動力は、ウォームギヤ部のウォームホイールの回転トルクによって駆動されているのですが、このホイールの回転力を生み出す力は、ウォーム軸のスラスト力なのである。 そして、その反力はウォーム軸のスラスト軸受けで保持すべきなのであるが、その軸受けが無いと言うことは・・・・・・・・・? メカニズムを理解していない設計者なのだと、言わざるを得ません。

 最初にこの構造に驚いたのは EF81-151 を分解調査した時でした。 ウォーム軸がすっぽりと抜けてしますのですが、作動上は問題なかったので、その後の深堀はしませんでした。 しかし、今回の調査で改めてスポットを当てることになったのです。

 

■ 同様なモデルを探す

 改めて、我がコレクションの中から、TOMIX動力車の分解調査報告を探してみると、同様の構成のモデルが幾つかありました。 

種類 品名 品番 発売時期 構造 調査報告 日付け 走行状態
電気機関車 EF15 189 2116 1983年5月 スプリングウォーム EF15 189 2010/11/22 作動音は酷いが問題無し
電車 1001 --- 2001年1月 スプリングウォーム 箱根登山鉄道1000形ベルニナ 1001号車 2016/7/2 作動音は酷いが問題無し
新幹線動力車 325-700 --- 2003年9月 スラスト軸受け無し 東海道新幹線 300系 一次形動力車 325-700号機 2022/3/11 ギクシャクだったが改善する
電気機関車 EF81-151 2198 2003年10月 スラスト軸受け無し EF81-151 2015/12/23 問題無し
新幹線動力車 E226-300 --- 2004年12月 スラスト軸受け無し 東北道新幹線 E2系 はやて/あさま動力車 E226-300号機 2022/3/9 ギクシャクとした走りと大きな音
新幹線動力車 E455 --- 2005年11月 スラスト軸受け有り E4系 東北・上越新幹線 (Max) 動力車 E455号機 2022/3/9 問題無し
電気機関車 EF510-4 2162 2005年12月 スラスト軸受け有り EF510-4 2015/12/23 問題無し
新幹線動力車 785-3302 --- 2008年8月 スラスト軸受け有り 東海道新幹線N700系動力車 785-3302 号機 2022/3/8 問題無し
電気機関車 ED75 710 2175 2009年1月 スラスト軸受け有り ED75 710 2010/11/22 問題無し
新幹線動力車 328-2 --- 2010年4月 スラスト軸受け有り 東海道新幹線 300系こだま 5号車 2016/7/10 問題無し
電気機関車 EF210-109 9142 2014年1月 スラスト軸受け有り EF210-109 2014/6/1 問題無し
電車 2001(M) --- 2015年3月 スラスト軸受け有り 箱根登山鉄道 2000形サン・モリッツ 2001号機 2022/3/2  問題無し

 今回の設計は、以前のスプリングウォーム方式をからの改良のために実施した設計変更と推察しますが、疑問の残る設計と思います。 また、承認した上司や設計審査のシステムなども疑います。

 しかし、2005年には、今に続く新しい設計思想で設計された機構に設計変更されています。 その機構を見てみましょう。

 ウォーム軸の両側は、樹脂製の軸受けでスラスト力をガッチリと受け止めています。 そうです!こうでなくちゃ!

 どこかで問題点を認めて、設計し直したものと推察します。 もう昔のことですし、自分としても情報に疎い時期でしたので、何があったのか知る由もありません。 そして、既に改良済みなのでとやかく言う必要は無いのですが、この時期のTOMIX製の中古品に手を出さないので賢明でしょう。 リコールなどで対策品を出されている様子もないので・・・・・・・・・!

 失敗を恐れていては技術の進歩はありません。 新しい技術に挑戦する時は、充分な試作と実験を実施し、意地悪試験なども実施して潜在する問題点をあぶりだす必要があるのです。 そうして、失敗を重ねて改善を進める必要があるのです。 今、日本の最新ロケットのエンジンも苦労しているようですね。 発射の延期に次ぐ延期ですが、この苦労は実際に経験したもので無ければ理解できないでしょう。

 

■ 改善対応を考えてみる

  問題の無かったEF81-151の例もあるので、原因をウォーム軸のスラストガタと推定して、改善対応を実施してみました。 それは、単純にスラストガタを詰める方法です。

 ウォーム軸の外側に逃げる方向のスラスト力はフランジ部や先端部で受け止めることが出来るでしょう。 しかし、モータ側に逃げるスラスト力はジョイントの頭を介して、モータのジョイント受け部で受止めるしかありません。 このため、この受け部のすき間をマイナスドライバなどでこじって広げ、ウォーム軸の逃げを狭くするのです。 問題の動力車では、1〜3ミリのスラストガタが有りました。 これを、コンマ数ミリのガタまで詰めてみました。 325-700号車とE226-300号車で実施しました。

 走行状態は各段によくなりました。 今までのギクシャク運転は無く、スムースに走行していましたが、作動音はまだ残っていました。 特に E226-300号車コツコツと言う不思議な音が小さくなったものの、残っていました。 歯車の傷かなと思って再分解して観察しましたが、そのような所は見つかりませんでした。

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 この対応策は、ジョイント受け部がいずれまた移動してしまい、不具合は再発すると思います。 新しい設計のモデルがすでに発売されていますので、資金に余裕がある方は、最新モデルに買い替えるので賢明な策と思います。 

 

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  2022/3/12