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鉄道模型工学  動力車の出力と出力効率

  Nゲージ鉄道模型に搭載されている色々なモータについて、その特性測定を実施してきた。 そしてモデル化手法を使って、モータを構成する6個の定数を推定することも出来た。 そこで、これらの定数データを比較して、各モデルの違いなどを検討するため、モータの出力とその効率を求め比較してきた。 その結果、モータの出力に注目すると、違いがはっきりとして見た目の体格とイメージ的には合ってきました。

 そこで、このモータを搭載している動力車両についても、車両レベルでその出力と出力効率を検討してみることにした。

 

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■ 動力車両の出力と効率

 動力車の出力、即ち仕事量は単位時間になす仕事を表し、仕事は力と移動距離の積で表される。 ここでの計算では、このサイトで使用している牽引力 Fk の gf と、スケール速度 V Km/h 、 そしてスケール尺度は、 1/150 として計算すると、

    出力 P 〔 W 〕 = 牽引力 〔 N 〕  × 車速 〔 m/sec 〕 = 0.0000181604 × Fk × V

で計算される。

 また、動力車両に入力されるパワーは、電圧と電流の積の消費電力で表わすことができるので、効率、即ち出力/入力の比は、

    効率 η = P /E・I × 1000

で計算される。 このサイトでの表示は、電圧 E はvolt 、電流 I は mA で表示しているので、最後に分子を 1000 倍して A(アンペア) の単位に変換している。

 さて、この出力と効率を計算するための測定データと言えば、動力車の測定を始めた当初から、牽引力と車速、および電圧と電流を測定しているので、以前の測定データを参照すれば容易に計算できるのである。 そこでたまたま目にしたC59-123号機の測定データをもとに、試しに計算してグラウ化してみた。 それを下に示す。

  

 マイナス側も一緒にしてしまったので、何だか変なグラフになってしまった。 測定データにはブレーキの掛かっている制動領域のデータも含まれているからである。 Nゲージの動力車はウォームギヤによるブレーキ作用によって出力と効率はこのようになってしまうと言うことであるが、今、知りたいのはプラス側の駆動状態の場合であるので、マイナス側は無視しよう。

 そのために、データを消去させるのは危険なので、グラフの表示領域をプラス側だけにして、表示させたのを下に示す。

  

 出力や効率が頭打ちになっているのは、動輪が滑り始めているからである。 最後には速度がゼロになって出力も効率もゼロに落ち込むはずである。 出力は電圧によってその勾配が大きくなるが、これは電圧を上げたために速度がアップしているためである。 また、効率については、この電圧と速度が比例しているために入力と出力の比率、即ち効率はほとんど変化していないのである。 効率は20%近くもあるので、Nゲージは効率が意外といいのだなぁ・・・・・・・・と思っていたのであるが・・・・・・・。

 

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■ 色々なモデルのデータ

 測定済みの動力特性データをもとに、幾つかのモデルの数値を計算してみた。 そのリストを下に示す。

 なお、個別のグラフは各モデルの調査ページに記載していますので、参照ください。

種類 機番 モータの種類 6volt定格 粘着牽引力 gf
出力 mW 効率 %
電気機関車 EF58-60 KATO 3期 45 4 30
EF510-4 TOMIX 43 4.5 30
EF210-109 TOMIX 45 5 28
ED16-3 KATO 4期 25 7 20
EF15-79 KATO 4期 18 3 18
蒸気機関車 D51-498A KATO コアレス 24 9.5 25
C62-36 KATO 4期 10 2 24
C59-123 KATO コアレス 26 19 23
C57-195 KATO コアレス 22 10 23
C62-2B KATO コアレス 22 7.5 21
C57-180 KATO  21 2.3 17
C50-21 KATO コアレス 13 6 12
C56-149 KATO コアレス 12 10.5 12
C56-144 KATO コアレス 10 6 11
電車 300系-5 TOMIX  45 5 30
名鉄2401 GM 2モータ 36 4.8 22
500系516-3 KATO 3期 30 3.5 22
モハ102-81 鉄コレ 45 6 20
キハ35-68 KATO 4期 15 3.5 14

 ここで、出力については、設定電圧によって変化するので、モータの特性解析の場合と同様に、     電圧=6ボルト

を定格(?)として比較することにしました。 その時の最大値をグラフより読み取っている。 そして、6ボルの場合の測定データが無い場合は、前後の設定値から補完して求めた。 効率についても同様である。 このデータをもとに棒グラフにしたものを右上に示す。 リストの表示順番については、何を知りたいかを考えながら色々な組み合わせてを変えてみて完投したが、粘着牽引力を基準にして順番に表示する方法に落ち着いた。

 表の数値だけでは理解できないものが、棒グラフにすると色々な事が見えてきます。 皆さんはこの棒グラフから何を読み取りますか?

 

■ まとめ

 気が付いた事を順不動に述べることにします。

 1)Nゲージ動力車の出力効率は、10%もいかなのだ!
最初に取り上げたC59-123号機の効率が20%もあったので、これくらいの値なのだと当初は思っていた。 しかし、他のモデルのデータを計算するにつれてそれは間違いであったことに気が付いた。 なぜ、この様に低い効率なのであろうか? そして、C59-123号機は何故これだけたかかたのだろうか? 計算間違いをしていないのだろうか、などと考えているのだが・・・・・・・・。
 2)Nゲージの出力はほとんど意味をなさないのだ!
Nゲージ車両の出力はモータのパワーではなくて、牽引力と速度の積で決まるのである。 さらに牽引力(粘着牽引力)は動輪に掛かる荷重と摩擦係数で決まるのである。 動輪の荷重はモデルのサイズの制約により限界があり、摩擦係数もトラクションタイヤの値は大体が決まっている。 従って、牽引力はおよそ、10〜20グラム程度なのである。 あとは速度で決まるが、スケール速度で楽しむことを前提にすれば、どのようなモデルでも決まってしまうのである。 キッズ達が走らせるかっ跳び走行は論外なのである。 従って必要な出力はおのずから決まってくるのである。 上記のグラフでは6ボルト定格などとして、電圧を一定にしてしまったのでモデル毎に差が出ているが、鉄道模型として楽しむ趣味の世界では意味のないデータと考えてしまうのである。
動力車が力持ちだとか、力不足と判断するのは出力(W ワット)ではなくて、牽引力そのもである。 どれだけの車両を牽引できるのか、あるいはどれだけの上り坂を上りきるのかなどで判断しているはずである。 速度を掛け合わせて出力として比較する必要はないのである。
 3)コアレスモータは効率がよい。
モータの解析時でも述べたようにコアレスモータは効率が良い事が知られている。 このためコアレスモータを使用したモデルは確かに効率が良さそうに見えるが、伝達機構の良し悪しによって、そのメリットは消えてしまうようである。
 4)Nゲージに効率の良し悪しが求められるのか?
効率の良い機械は優秀な機械であると一般的には言えるであろうが、果たしてNゲージに当てはまるのだろうか? 効率が良いと電気代が安くつく・・・・・・・? 否、もっと重要なポイントがあるはずである。 それは、走りの滑らかさ、静かさ、低速でのスタート具合、・・・・・・・・・・等々であり、効率の良し悪しは問題外なのだ!

 自分の下した結論は、出力や効率をせっせと計算したが、あまり意味のない無駄な作業であったと結論つけた。 今後は測定データの片隅に参考程度に記載しておき、伝達機構の良し悪しを見る参考データ程度にしておこう。

************  動力車の出力と出力効率について (2016/11/28) を再編集 ********