HOME >> 動力車の調査 > 電車系の動力車の特性 (牽引力特性)
所有するNゲージの電車・気動車類の中の動力車について、その動力特性を測定してきました。 その整理のために、牽引力特性について一覧表にまとめましした。 測定データは以前から実施してきた旧測定システムによるデータや、最新のシステムによる測定も含めています。
● 特性図の見方
測定データより作成した特性データについての説明は、「測定データ 特性線図から何が読み取れるか」(2019/3/16)にまとめていますので、参考にしてください。 また、少し見に難くなっていますが、モデル毎の比較のためにグラフのスケールをなるべく統一しています。 そして、特性に影響を与えると思われる諸元についても付記しておきましたので参考にしてください。
■ 牽引力特性の比較一覧表
個別のページより関係するデータを引用していますが、グラフ表示のためのスケールは変更しているものがあります。 対象モデルのメーカ、品番、車両重量、カプラーの方式、トラクションタイヤの位置なども記入しておきます。 トラクションタイヤのイラストは、タイヤの有無と、二つの台車の内側、あるいは外側かを示しており、左右の位置は確認していませんので悪しからず。
No | モデル(引用元) | 牽引力特性 | 備考 |
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1 |
TOMIX 96.4 グラム、ボディマウント
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2 |
TOMIX 96.4 グラム、ボディマウント |
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3 |
KATO 69.6 グラム、ボディマウント |
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4 |
KATO 68.5 グラム、ボディマウント |
トラクションタイヤ無し | |
5 |
KATO 69.9 グラム、ボディマウント |
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6 |
TOMIX 72.2 グラム、ボディマウント |
車載カメラシステムセット用の専用動力車 | |
7 |
TOMYTEC 56.6 グラム、台車マウント |
動力ユニット TM-18 20m級D |
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8 |
KATO 65.9 グラム、台車マウント |
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9 |
KATO 64.0 グラム、ボディマウント |
トラクションタイヤ無し | |
10 |
KATO 68.8 グラム、ボディマウント |
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11 |
GREEN MAX 54.9グラム、台車マウント |
動力ユニット 20m級用No.5711 |
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12 |
GREEN MAX 74.6グラム、台車マウント |
動力ユニットFD(DT61付) 品番:0645 |
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13 |
GREEN MAX 64.5 グラム、台車マウント |
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14 |
GREEN MAX 48.2グラム、台車マウント |
動力ユニット 18.5m 級 N0.5714 |
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15 |
GREEN MAX 53.9グラム、台車マウント |
動力ユニット 20m級用 No.5711 |
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16 |
GREEN MAX 73.9グラム、台車マウント |
動力ユニット FD(DT61付) 品番:0645 |
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17 |
TOMYTEC 52.2 グラム、台車マウント |
鉄コレ17m級 動力ユニットA |
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18 |
TOMYTEC 52.1 グラム、台車マウント |
鉄コレ17m級 動力ユニットA TM-05 |
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19 |
TOMIX 69.5 グラム、ボディマウント |
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20 |
KATO 82.6 グラム、ボディマウント |
■ 考察
この一覧表を眺めていて、感じたことを順不同で記述していきます。
● モデルの牽引力とは?
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一般的に呼称しいる ”動力車の牽引力” とは、何を指しているのでしょうか。 そのモデルが発揮できる最大の力と考えるのが妥当ですが、測定データからその値を読み取るのはなかなか困難なのです。 最大の力は、車両がスタックしている時の力なのでしょうか? μカーブの概念を知っている方は違うと思われるでしょう。
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そこで、自分としては、牽引力・車速のグラフにおいて、スタックに近い状態でのおおよその値を、いい加減に読み取って判断することにしました。 悪しからず!
とは言ってもせっかくのデータなので、右の様にグラフに表してみました。 トラクションを履いている車両について、車両重量と最大牽引力の関係を示したものです。 バラツキはあるものの、近似直線を引いてみると原点をゼロ近辺にした直線となり、その勾配は0.34 となりました。 左のグラフです。 原理から考えるとこの近似直線は原点を通る直線と考えられるので、近似曲線の条件を変えてグラフに示したので右のグラフです。 勾配は0.30となりました。
この値は、スタック状態に近い時の動輪の回転摩擦係数と考えられますので、車両重量からおおよその牽引力を推定することが出来ることを意味しています。
最大牽引力 ≒ 0.30 × 車両重量 (単位:グラム)
この勾配の係数は、「トラクション・タイヤの有無を比較する (新)」(2016/2/28)など、一連の報告にて求めた摩擦係数とも合致する値なのである。
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また、グラフを見ると、車両重量が50グラム前後の車両において、片や10グラム、片や20グラムの牽引力を得ています。 2倍も差があるのは何か構造的な要因があると思われます。 台車の荷重移動などが原因かもしれないし、トラクションタイヤのへたりなどの要因が考えられますが、まだ解明されていません。
● 新幹線車両は力持ち
手持ちの新幹線車両の中で、特性を測定したのは No.1と No.2のみです。 その理由は、特殊なカプラー故に重り車両の設定に苦労するからです。 しかし、この車両の牽引力は 30 グラムもあります。 他の電車類が、せいぜい20グラム程度ですから、1.5倍の力持ちです。 その理由は、モータや動力機構は他のモデルと同じような構成なのですが、車両重量が重いからです。 これは、床下形状の重りをセットする空間がたっぷりとあるからです。
でも、重量比だけでなく、たの要因もありそうですが、まだ解析出来ていません。
● 同じモデルでも特性にバラツキがある
精巧な工業製品と言えども、出来上がりの具合がそれぞれ個別に違ってくるのは仕方がありません。 今回のリストの中で同じモデルの例と言えるのは、 No.1と No.2、 No.17と No.18 があります。
No.1と No.2の場合は、ほとんど同じ特性であると言えるぐらいですので、重連運転をさせても問題ないでしょう。 実際の走行でも問題ありません。
No.17と No.18 の場合、牽引力・車速特性ではほとんど同じですが、牽引力・電流特性では大きく異なっています。 その理由を探ってみると、「鉄コレ名古屋鉄道 3700系電車の電飾を工作 その4」(2022/5/17)にて、モータ不調によりモータを交換していました。 このため、経歴不明のモータの違いによるのではないかと推定しています。
● トラクションタイヤの有無の比較
ほぼ同じモデルで、トラクションタイヤの有無を比較出来る例として、No.3と No.4があります。 牽引力は20グラムぐらいから15グラム程度に落ちていますが、スリップ率のデータを見てみると、トラクションの無い場合は早い段階から動輪が滑っているのが分かります。 一方で、トラクションを履いている場合には、牽引力の大きな領域まで滑らずに粘っているのが分かります。 (個別データにアクセスして確認してください。)
単独では、No.9もあります。 このモデルは2両編成で走行させるのを想定して設定されているので、トラクションタイヤを元から装着されていません。 従って、他の車両よりも牽引力はかなり小さくなっています。 No.4と比較して、速度に関してはかなり異なっていますが、牽引力に関しては同じような傾向を示しています。
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そして、トラクションタイヤの位置は、全車とも内側の車軸に装着していました。 これは「台車の荷重移動 台車マウントの場合 その2」(2019/10/29)での検討結果とも合致していますが、メーカーとしては古くから実施している経験上のノウハウなのでしょうか。
● GMのコアレスモータ
発売当初は注目していた GREEN MAX 製のコアレスモータですが、期待外れでしたね。 No.11、No.14、No.15 にデータを示します。 他の電車等と比較して、極端に速度が遅くなっていいるので、ATSシステムを設置している小生のレイアウトでは、同時に他編成の列車を同時に走らせることが出来ません。 他の電車にすぐに追いつかれてしますからです。 このことは、自社製の他の動力ユニットとも同じことが言えます。 手持ちの編成の動力をすべてコアレスに取り替えるなど、財力に余裕のある方には問題ない事かもしれません。
この他にも課題が多いので、自分は諦めてTOMIX製の動力に取替可能なモデルは、交換してしまいました。 No.12、No.16 です。 No.14 は交換出来るユニットが見つから無いのです・・・・・・・・・!
● TOMIXの動力ユニット
自分は、平均的な電車用のTOMIX製動力ユニットは持ていませんでした。 今回、No.12、No.16 で初めて他社の車体に取り付けましたが、 なかなかの力持ちであることが分かりました。 でも、KATO製のユニットと比較して特性のパターンが違っている点に注目しているのですが、まだ解明できていません。 特に牽引力・電流特性に於ける制動側のパターンです。 「制動領域での動力特性」(2019/6/12)にて考察した内容とは少し違っているのです。
牽引力・電流特性から見ると、A方向に進む例 【 遷移点が大きい場合 】に該当しているのですが、牽引力・速度特性ではパターンが異なっているのです。 なぜだろうと言う疑問が湧いてくるのですが、解析のためにはモータの回転数を同時に測定する必要があるのです。 しかし、その道具はすでに解体済みなのです・・・・・・・・・・・・。
● 鉄コレの動力ユニット
自分のコレクションには、鉄コレ車両が多くあります。 小型車両が多いのは、いろいろな種類を集めていたからです。 しかし、走行音が大きいことなどの理由で、Bランク動力として、動力特性の測定などは2の次でした。 今回の整理で気が付いたことの一つとして、動輪が早い段階から滑り出しいるパターンが気になったことです。 しかしその測定は不可能となっているので、せめて、測定対象の種類だけでも増やしてみようと考えています。
● まとめ
まとめとして、いろいろ列挙してみました。
このように考えていますので、今回のまとめは自分の頭の体操をかねた、趣味の範囲、即ち、自己満足なのです・・・・・・・・・。